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何やら思ったより難しいというか問題続出というか、この詩にこれほど百家争鳴状態とは思わなかった。それでもなお、疑問なところもあって、このアホウドリとは、コールリッジ『年寄り船乗り』のアホウドリではないだろうか。
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はたまた、ボードレールが愛読したエドガー・アラン・ポー、の怪作『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』の掉尾を飾る、「テケリ・リ!」と鳴くあの鳥ではないだろうか。
詩人はそんなあからさまに書いてはいないけれど、こんな面白いネタを被せもしないで書いたとも思えない。「深淵」を気にする辺り、メエルシュトレエムを意識してもいるのではないか。
というわけで無理やりながら、てけりりりりと押し込んでみた。いくら何でもも少しマシな遣り方があるよという方は、是非ともコメント欄へどうぞ。
憂鬱と理想 SPLEEN ET IDÉAL
II
アホウドリ L’ALBATROS
Charles Baudelaire/萩原 學(訳)
よくある事だが、船員たちはてけえりりと
捕まえる、アホウドリなるデケえ海鳥、
鈍過ぎる旅の仲間よろしくついてくるのを、
苦々しく、船は深淵をかすめ滑り。
Souvent, pour s’amuser, les hommes d’équipage
Prennent des albatros, vastes oiseaux des mers,
Qui suivent, indolents compagnons de voyage,
Le navire glissant sur les gouffres amers.
甲板に据ゑられたれば
不器用に身を縮める蒼穹の王たち
哀れにもその大きな白い翼は
脇に引きずる、古臭い櫂のように。
À peine les ont-ils déposés sur les planches,
Que ces rois de l’azur, maladroits et honteux,
Laissent piteusement leurs grandes ailes blanches
Comme des avirons traîner à côté d’eux.
なんと間抜けで意気地なし、翼あるこの旅人が!
あれほどの男前に見えたのが、なんと滑稽で不様なことよ!
短いパイプで嘴ギコギコ研ぐ者有れば、*1
また誰ぞ足を引きずり、空飛べる不具者の真似を!
Ce voyageur ailé, comme il est gauche et veule !
Lui, naguère si beau, qu’il est comique et laid !
L’un agace son bec avec un brûle-gueule,
L’autre mime, en boitant, l’infirme qui volait !
詩人もこの雲の王子のよう、
飛べば嵐を弄び、構える射手を嘲笑い。
誹謗に囚われ、地上に追われたら最後、
大なる翼、もはや歩みを妨げるばかり。
Le Poëte est semblable au prince des nuées
Qui hante la tempête et se rit de l’archer ;
Exilé sur le sol au milieu des huées,
Ses ailes de géant l’empêchent de marcher.