[POETIC LABORATORY] ★☆★魔術幻燈☆★☆

詩と翻訳、音楽、その他諸々

【対訳】ボードレール『悪の華』50. 曇り空

悪の華
Les Fleurs du mal (1861)

Charlesシャルル Baudelaireボードレール/萩原 學(訳)


憂鬱と理想
SPLEEN ET IDÉAL


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50. 曇り空
L
CIEL BROUILLÉ

マリー・ドーブラン詩群 脚韻AABB


貴女の眼差し、霧がかかるようにどんより、
貴女の不思議な瞳 (青、灰色、それとも緑?)
優しさ、夢見心地、残酷がうつり替わるのは
この空の物憂さと蒼白を映し出しているのか。

On dirait ton regard d’une vapeur couvert ;
Ton œil mystérieux (est-il bleu, gris ou vert ?)
Alternativement tendre, rêveur, cruel
Réfléchit l’indolence et la pâleur du ciel.

ぬるくるまれた白い日々を思い出させてくれる、
魔法をかけられた心が涙に溶ける、
かと思えば、正体不明の邪悪なものに苛まれ、
目覚め過ぎた神経に、眠っていた心を嘲笑され。

Tu rappelles ces jours*1 blancs, tièdes et voilés,
Qui font se fondre en pleurs les cœurs ensorcelés,
Quand, agités d’un mal inconnu qui les tord,
Les nerfs trop éveillés raillent l’esprit qui dort.

貴女は時々、この美しい地平線にも似て
霧の季節の陽に照らされて……
貴女のなんと輝くことか、濡れそぼつ風景に
包まれることか、霧深い空から降る光に!

Tu ressembles parfois à ces beaux horizons
Qu’allument les soleils des brumeuses saisons……
Comme tu resplendis, paysage mouillé
Qu’enflamment les rayons tombant d’un ciel brouillé !

いやはや危険な女よ、魅惑の風土よ!
私もまた、貴女の雪と霜とを愛でよう、
この冷酷な冬の中から引き出す事もあろう
氷よりも鉄よりも鋭い快楽というものを?

Ô femme dangereuse,*2 ô séduisants climats !
Adorerai-je aussi ta neige et vos frimas,
Et saurai-je*3 tirer de l’implacable hiver
Des plaisirs plus aigus que la glace et le fer ?

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トーヤさんはロバート・フリップ御大の奥様。ミュージシャン同士のご夫婦で、末永く仲良しなのは珍しいような… 実はご結婚前のトーヤ・ウィルコックスは、なんか黒魔術ファッションな雰囲気が嫌で聞いてなかったから、結婚してからどう変わったとは言えないのと、自分は忌中で年賀状は出せないので、これにてご勘弁を…


訳注

 モデルと思われるマリー・ドーブランは女優で、テオドール・バンヴィルの愛人。横恋慕したボードレールは彼女に尽くそうとするも、果たせなかったようだ。その姿絵は遺っているものの、その瞳が緑色であったかまでは判らない。
 あまり評判ではないけれど凝った造りで、地元ではそこそこ人気曲らしい1篇。

*1 jours:
jour(1日)の複数形なので「日々」で良かろう、この後の修飾をどう訳すか。普通に訳せば「白く、暖かく包まれた日々」となろう。しかし blanc なら「白」で良いが、複数形だから「白人」になるし、前節 pâleur との対比もあるし、ces jours blancs というから「白い日々」でもあるようだし、というか絶対狙って書いてるよな此奴、などと考えてしまう、訳者にとっては大変悩ましい1節。ゆえに訳文も少しばかり仕込をして、この悩ましさを読者にも是非。
*2 dangereuse:
英語の dangerous に当たる、「危険」を意味する一語。を、ボードレールが、作中の「私」に、しれっと言わせている。いやはや、誰が「危険」だって?
御前賀 夕菜(1991~ 日本)
*3 saurai-je:
「どうして」「どうやって」的な言い方なので、普通に訳すと次行と合わせて「どうすれば、…できるのだろう?」となるのだろう。でも、この詩人が書く詩は地雷原そのもので、此処にも何か埋まっている気がしてならないのだ。
雑記

 熱を出して病院行ったら、インフルエンザでした。タミフルカロナール飲んでも、その日は38.4℃まで上がったが、翌日には37.6℃、その次の日は36.7℃と下がって安心。と思ったら、今度は夜に眠れなくなりました。悪夢を見てるらしく、でも目が覚めると覚えてないのが残念でなりません。