春の歌 拾遺
いよいよ今更ではあるが、忘れていた「春」もののお届け。主にクラシックから。
春の歌 メンデルスゾーン :無言歌集 第5巻 Op.62-6 U 161 イ長調
曲名に聞き覚えがないという方も、聞けば思い出すであろう一曲。
ワルター・クリーンはグラーツ生まれ、ウィーンで活動していたピアニスト。NHK の番組で取り上げられた時は「ウィーンの中堅」と紹介されたように記憶する。吹き込んだのが米国のヴォックスというマイナーなレーベルだったせいか、ろくに知られないまま世を去ってしまった。
ブノワ・フロマンジェは、パリ生まれの指揮者にしてフルート吹き。1998年 TUDOR 録音。知らないレーベルだったが、この CD は時々思い出して聴く。編曲は Giuseppe Gariboldi/J.N.Rauch とされている。まさか、と思ってよく見たらガリバルディ Giuseppe Garibaldi じゃなかった、そりゃそうか……
クライスラー編曲を謳っているけれど、実際に弾いているのはムターなので、コレジャナイ感は拭えない。というか、本当にクライスラー編曲なの?御大の録音は見つからない。同じ「無言歌集」から、別の曲なら有るのだが。
結局、フリッツ・クライスラーの演奏は出てこないので、別の人の演奏を。実はピルツァーというヴァイオリン弾きを今まで知らなかったのだが、甘美至極。
春に寄す グリーグ『抒情小曲集』第3巻作品43の6
幸いなことに、フリッツ・クライスラーが弾いたグリーグ「春に寄す」は、こうして遺っている。未来への遺産という奴だな。
春の声 ヨハン・シュトラウス二世 作品410
これもご存知かと。演奏はクレメンス・クラウス指揮ウィーン・フィル。実際は4月より新春に聞くことが多い曲ではある。
春 ベートーヴェン 第5ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 作品24
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ヴォルフガング・シュナイダーハンのヴァイオリン、カール・ゼーマンのピアノで。楽章ごとに別ファイルになっているものしか出てこないので、少し面倒ではあるが順番にどうぞ。…YouTube でプレイリスト探した方が便利かな。
四季 アントニオ・ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲集『和声と創意の試み』作品8
ルツェルン祝祭弦楽合奏団は、シュナイダーハン先生のお弟子さんルドルフ・バウムガルトナーが指導し指揮するバロック音楽専門の楽団で、だから全員がウィーン・スタイルの演奏家と思っていい。古楽器演奏が当たり前になってしまった今日では、受ける印象が少し違うかもしれない。イ・ムジチ合奏団は「アルプスの南側」、シュナイダーハンとルツェルン祝祭合奏団は「アルプスの北側」と評してる人が居て、なかなか穿ったことを言うものだ。
シュナイダーハンはインタビューに答えて「好きな音楽などというものはない。演奏家が好き嫌いなど言ってはいけない、何だって演ってみるべきだ」と明言してしまう、言うだけではなく難解な現代音楽もどしどし演奏してしまう、演奏家のお手本のような人だけど。最初からそうだった訳ではなく、ルドルフ・バウムガルトナーと議論しての結果らしいから、温故知新というところか。
この録音の難点は、アルヒーフ・レーベルの癖が強く出ていて、高音がキンキンしてしまいがち。一昔前のステレオなら、当たり前にトーン・コントロールが付いていたものだが。トーン・コントロールのないセットを使っているなら、スピーカーから離れて聞いてください。いま出ているCDは、さすがに幾分マシにはなっている。
朧月夜
練習したんだろうな、ドイツ人。大学の第二外国語でドイツ語取ったら、クラシックとは全然関係ない現代の平板な小説読まされて、単位は取れなかった。
この人は前世紀が全盛期だった。インターネットどころかキャプテン・システムがどうこう騒いでいた時代だったから、レコードが買えなければレンタルレコードかエアチェックしかなかった。学生で金はなかったから、廉価盤を中心に購入し、高価な新譜は手が出なかった。結果として、彼女のレコードは棚に並んでいない。マイクロ精機のターンテーブルが制御不能になってそのままだから、どっちみち当時買ったレコードは聞けないが。
はてなブログに用意された方法では中島美嘉オフィシャルが出てこず、YouTube で URL を取得し貼り付けた。不具合があればコメントにて御一報ください。
編成も歌い方もほぼ古典的な整正の美、jazz の要素は薄い。ドラムとベースを加えてドカドカ演るのも聞いてみたいけれど、この曲はこの方が合っているかも。
ボーカロイドを使うと、自分が歌わなくていい代わりに歌わせなくてはならない訳で、却ってセンス丸出しになってしまう、割と怖い楽器な気がする。みんなよくやるなあ… 感心。
変わり種ばかり聞いた後では、こういうので良いんだよ、と思ってしまう。
春よ来い
……済まない。今年の春はもう、とっくに来てんだよ……
hania rani : Spring
見落としがあったので追加。ハニャ・ラニさんはポーランド出身アンビエント系ピアニストということになっているが、クラシック畑の現代音楽家でもあるので。


