悪の華
Les Fleurs du mal (1861)
Charles Baudelaire/萩原 學(訳)
絵に描いたパリ様々
TABLEAUX PARISIENS

92. 盲人 LES AVEUGLES
2版XCII、3版CXVI
ブリューゲルの絵を元にした作品。というが、ブリューゲルの絵それ自体が聖句を元にしている。フランスの詩人ボードレールがやたらと聖書を気にするのは、イギリスの詩人ロバート・ブローニングと共通していて、よくも悪くもキリスト教が19世紀欧米文化に与えた絶大な影響が窺える。……救い主も中々酷いことを言うものだと思わないでもない。
マタイによる福音書第 15 章
13 イエスは答えて言われた、「わたしの天の父がお植えにならなかったものは、みな抜き取られるであろう。
14 彼らをそのままにしておけ。彼らは盲人を手引きする盲人である。もし盲人が盲人を手引きするなら、ふたりとも穴に落ち込むであろう」。
とっくりと想ってもみよ、わが魂よ、ぞわぞわとおぞましい奴等を!
見るからにマネキンも同然、して何処か滑稽で、
怖ろしげで、突拍子もない、夢遊病者のようで、
暗黒の球体を、どこへともなく動かして止まず、ぐりぐりと。
Contemple-les, mon âme ; ils sont vraiment affreux !
Pareils aux mannequins ; vaguement ridicules ;
Terribles, singuliers comme les somnambules ;
Dardant on ne sait où leurs globes ténébreux.
両眼から、神聖な煌めきが何処かに行ってしまって、
まるで遠くを見るかのように、仰いだままだ、
空を。一度も見られたことはない、石畳に向かって、
重い頭を、何か夢見るように傾けている姿は。
Leurs yeux, d’où la divine étincelle est partie,
Comme s’ils regardaient au loin, restent levés
Au ciel ; on ne les voit jamais vers les pavés
Pencher rêveusement leur tête appesantie.
かくて揃って乗り越える、果てしない闇を、
永遠の静寂の兄弟を。おお、都よ!
おまえが歌い、笑い、咆え哮るうちにも、
Ils traversent ainsi le noir illimité,
Ce frère du silence éternel. Ô cité !
Pendant qu’autour de nous tu chantes, ris et beugles,
もはや残虐なまでに快楽に溺れてしまって、
私自身も引き摺られ!連中以上に呆然として、
私は言う。天に何を求めるとやらだ、盲人たちよ?
Éprise du plaisir jusqu’à l’atrocité,
Vois ! je me traîne aussi ! mais, plus qu’eux hébété,
Je dis : Que cherchent-ils au Ciel, tous ces aveugles ?
ヘルムート・ヴァルヒャ先生は、生まれつき目が弱く、16歳で失明してしまった。しかし音楽の研鑽を続け、素晴らしい演奏を数多く録音した。中でも大バッハのオルガン全集はその白眉であろう。You Tube のプレイリストを何とか入れることができたので、此処から好きなだけお楽しみあれ。もっとも御本人は盲人扱いを嫌がっていたようで、その気持ちは判るにしても、だからこそ達成できたものもあるように思う。
余談: Photoshop Express によるフォトレタッチ
fortia 氏の記事で気になったのと、改変表示をしていなかったのは問題があるように思われたので。
ブリューゲルの絵は、Wikimedia にある public domain の画像を ADOBE Photoshop Express でレタッチしてある。public domain. の作品だから著作権上の問題は起こらないけれど、お断りはしておくべきだった。無料版は制限があり、一定期間が過ぎたら透かしが付くようになるが、まぁ大体の事はできるし、レタッチ済なのをお報せする意味でも透かしがあった方が良いのではないか。
まず「フィルタ」で全体的な調子を変えられる。今回は使わなかったが「鮮やか」「ブエノ」「白黒」など、無料版でも結構種類があり、有料版だと使い切れそうにない。これが携帯に入っているので、撮影したその場で加工できるのは有難い。と思ったが、実際はカメラ側に補正機能があるので、そういう使い方はしていない。
「調整」で実際には「明瞭度」「ホワイト」「シャドウ」を少し上げた。画面右上に消失点を置き、左下から右上に向かって奥行きが出るよう描かれているのが、若干ながら見やすくなった。PC でやった方がやりやすいと思うが、旅先で重い荷物はもう持ちたくない。
スクリーンショットなどから「切り抜き」「回転」「角度補正」もできる。書籍の紹介に使っている。
最近は画面に入った好ましからぬ人物の排除までできるらしいが、それはレタッチの範疇ではないように思うし、そういう圧政的なことはしたくないし知りたくもない。恐ろしい時代になったものだ…
