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【対訳】ボードレール『悪の華』101. 霧と雨 + ショスタコーヴィチ第4弦楽四重奏曲

悪の華
Les Fleurs du mal (1861)

Charlesシャルル Baudelaireボードレール/萩原 學(訳)


絵に描いたパリ様々
TABLEAUX PARISIENS


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101. 霧と雨

CI

BRUMES ET PLUIES

ソネット形式 脚韻AABB CCDD EFF EGG

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きりりとした晩秋よ、冬よ、泥塗れの春よ、
眠たい季節よ!おまえを愛で、讃えようよ。
包んでくれるから、わが心や頭脳でさえも、
湯気出す経帷子や、よく解らない哀悼歌もて。

Ô fins*1 d’automne, hivers, printemps trempés de boue,
Endormeuses saisons ! je vous aime et vous loue
D’envelopper ainsi mon cœur et mon cerveau
D’un linceul vaporeux*2 et d’un vague tombeau*3.


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冷たい海風オータンが吹いてくるこの大平原で、
長い夜に風見鶏も声をらすこの地で、
わが魂は、生温い芽生えの時よりも
そのカラスの羽根を大きく広げよう。

Dans cette grande plaine où l’autan*4 froid se joue,
Où par les longues nuits la girouette s’enroue,
Mon âme mieux qu’au temps du tiède renouveau*5
Ouvrira largement ses ailes de corbeau.


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葬儀用品に満ちた心にこれこよなく、
久しくも霜の降りた心には甘美よ、
仄暗ほのぐらい季節、クリマの女王たちよ、

Rien n’est plus doux au cœur plein de choses funèbres,*6
Et sur qui dès longtemps descendent les frimas,
Ô blafardes saisons, reines de nos climats,*7

貴女の青白い闇の永遠なる様相より甘く、
……さもなければ、月のない晩、二人して、
危険な寝床で痛みを眠りに誘おうとして。

Que l’aspect permanent de vos pâles ténèbres,
— Si ce n’est, par un soir sans lune*8, deux à deux,
D’endormir la douleur sur un lit hasardeux.

ショスタコーヴィチ第4弦楽四重奏曲


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モリナーリ四重奏団の演奏で聞いてみる。聞き覚えがないと思ったモリナーリ四重奏団は、現代音楽専門らしく。その名は、画家のグイード・モリナーリを記念したものらしい。

訳注

*1 fins:
殆どの訳で飛ばしているようなので、使えないか考えてみた。女性名詞 fin は一般的に「終わり」「目的」の意味で使われるけれど、この位置でそれはないだろう。形容詞で「細い」「鋭い」の意もあるので、そんな感じなら「晩秋」には似合いかと
*2 D’un linceul vaporeux:
書いてある通りに訳したら「蒸気の覆い」になり、さすがにソレは無いかなと考え直すも、やっぱり「そんなモノ有るかい」と突っ込まれそうなモノにしかならなかった
*3 d’un vague tombeau:
tombeau は「墓」であるところ、形容詞の vague は「曖昧模糊」なので、現実の墓ではない。そこで調べると、他に悼み歌の詩歌をも tombeau と称するので、こっちの意味だろう
*4 l’autan:
地中海から吹くマリンと呼ばれる風の延長みたいなもので、もはや海の要素は無いらしいのだけど、南風という感じでも無いらしい…… share.google
*5 renouveau:
英語 renewal に当たり、「再生」「再開発」の意味。だが、春を「再生の時」とはあまり言わないので訳語を撰んだ
*6 de choses funèbres:
そのものの画像が引けなかったので、取り敢えずそのまま訳した。葬式を思わせる不吉なものばかり、という意味では有ろう
*7 reines de nos climats:
何かの商標に見える。と感じて検索したら、ブルゴーニュではワインのブドウ畑栽培区画をクリマと称する。今では climate と言えば「気候」だが、古くは一定の区画、フランスでは「60ピエ四方の土地の単位」を指したという。 share.google ただ残念ながら、reines de nos climats と称するに近い商標は見当たらない。複数の商標をまとめて称したものかも知れず、そうなるとお手上げ
*8 un soir sans lune:
電灯のない時代に「月のない夜」というのは、新月か雲が掛かっているかであるから、何か特別な意味があるのかと調べたが、解らなかった。何か有りそうなのだけど、保留