PT15(T)シングルアンプを見て感動
friendsofvalves さんのPT15(T)シングルアンプ製作記事を見て、ある種の感動を覚え、つい余計なことを書いたら、お鉢がこちらに回ってきたので(笑)お返事しなければなるまい。
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筆者は定年退職するより5年ほど前、脳梗塞で左足が動かなくなり、もう終わりだと思って機材どころか PC まで処分してしまったから、残るはスマートフォンとカメラのみ。それも先ほど見たら、カメラのバッテリーが上がっていた。充電器を買っていなかったから、注文しないと動かない。という訳で申し訳ないことに、製作どころかシミュレートすらできない有り様、茶々入ればかりの現状であるが。思考実験と記憶を頼りに、思いつくまま書いてみる。
PT15フィラメント周りの工夫

回路図をダウンロードして書き込みしようとしたらエラーになり、扱えなかったので、スクリーンショットから切り出してみた。実は最初に感動したのは、ハムバランサに使う可変抵抗器の扱いで、このように接続すると、接点の問題を無視できる。可変抵抗器の消費電力も少なくできて、たぶん実際には半固定抵抗器に、これなら精度の良いサーメット・トリマが使えそうだ。
カソード・バイアス用半固定バイアス回路(?)
可変抵抗器の、このような使い方ができた理由が、トランジスタを使った電圧調整回路にある。バイアス電圧の大半を此処で担うから、可変抵抗器の負担が減る訳だ。言ってみれば、Tr に固定抵抗器の代わりをさせているので、盛大に発熱するのは避けられないけれど… AB級プッシュプルでは普通に見かけるバイアス回路だが、普通はNPN型Trを使う。ものと思っていた。
ところが今回の増巾器では、PNP 型を使っている。訊いてみれば、コレクタがグランド電位になるから、絶縁しなくても安全と。なるほど、それならシャーシに直接取り付けることも可能。下手なヒートシンクより、シャーシの方がよく冷えることもあるのだ。そう言えば、サウンドストリーム社のカーオーディオ用パワー・アンプを開けて見たことがあって、筐体がヒートシンクになっており、パワー・トランジスタはその下、かつプリント基板の裏側。足だけ基板を貫通してプリント面に直付け、グリス塗った石は基板を介して天板に固定。基板取り付けネジが石の固定を兼ね、出力石がスペーサーを兼ねていたので、なんとスマートな実装かと感心したのだが、普通に絶縁シートは使っていたと思う。
グリッド接地の提案
閑話休題。残念なことに、2SB1098は2Wほどの電力を消費しながら、出力には貢献していない。働け。という代わりに、利用できないか考えてみた。
三極管の回路で、グリッド接地というのがある。中林 歩氏の解説を読んで…も解らないけれど、回路を見て考える。

これがグリッド接地だということを理解するために、入出力回路を上塗りしてみた。

入出力にグリッドを共用しているので、半導体の例に倣い「グリッド共用回路」と呼んだ方が解り易いと思うのだが、今のところ「グリッド接地」と呼ぶ事になっている。カソードに入力し、プレートから出力。間に挟んだグリッドがアースされシールドと化すので、出力から入力が見えてしまうミラー効果は無くなる。

一般的なカソード接地と比べて大きく違うのは、グリッドリーク抵抗 Rg の有無だ。Rk には電流を流すので、Rg のような高抵抗は使えない。ところが、今回取り上げるPT15シングルについては、Rkの代わりにPNPエミッタ・フォロワが入っているということにできそうだ。用例がないか探したところ、上條信一氏の提案があった。

これは概念図で、実際に製作はされていないようだが、実現可能と見て良いだろう。上條氏は命名して「コンプリメンタリ差動回路」と、まるでどこかのD差動回路のように称し遊ばされ、仰天しつつもなるほど相補的に動くものかと納得もする。見るからにカスコード接続そっくりだけど、カソード接地にグリッド接地を重ねるカスコードとは上下が入れ替わるので、同じことにはならない筈だ。

これをPT15シングル音声増巾器に適用するには、まず段間結合コンデンサ0.16μFを、PT15グリッドから2SB1098ベースへ繋ぎ換え。パスコン4.3μFは外す。その際、ベースに抵抗を入れないと発振の恐れがある。抵抗を描こうとして山一つ足りないが、そこは脳内補間して頂きたい。後は Rg になっていた470kΩをジャンパに替え、+B1〜2SB1098コレクタを結ぶパスコンを追加。これでグリッド接地になる筈だ。成功すれば、出力と歪率の向上が見込める。……せめてシミュレートしてからでないと、実際に起こることは予想もつかないものだが。
気になる点
手放しに褒めて済ませたい一方、何となく気になる、たぶん大丈夫だけど、ひょっとしたらというところも無くはないので。

アルミ電解コンデンサの分圧
電源回路で、アルミ電解コンデンサを重ねている。コンデンサを2個以上直列に接続すると、上下が不揃いになってパンクする事があるので、ブリーダー抵抗を並列に入れて分圧回路を構成する。抵抗の代わりに、シリコンダイオードの逆接続という手もある。これを回路図に描き漏らしているのは気になる。
整流管の保護抵抗
これを正直に入れてある製作例を見たことはないが、製造元では指定している。

この図はシルヴァニアの資料で、整流管のAC入力電圧に応じた最小限必要なインピーダンスを示している。抵抗ではなくインピーダンスと表現しているのは、電源トランスの内部抵抗を含むからで、多くの場合は省略できる使用条件になっている…はずだ。
Rs = N2Rpri + Rsec + Ra
- N:
- Voltage step up ratio of plate transformer.
- Rpri:
- DC resistance of transformer primary.
- Rsec:
- Average DC resistance of transformer secondary per section.
- Ra:
- Added series resistance.
グラフから、400V入力に対しては 68Ω ほど必要。と読み取れるから、電源トランスの内部抵抗が一次側・二次側合わせて 68Ω以上なら、保護抵抗不要。……ちょっと気になるが?せめて18Ωくらいは入れた方がいいのでは?同じ資料の用例では、300Vで35Ω、450Vで85Ωとしている。トロイダル・コアなど内部抵抗の少ない電源トランスを使うなら、保護抵抗必須だと思う。
以上、お粗末様でした。