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【対訳】ボードレール『悪の華』113. 血の噴水 LA FONTAINE DE SANG + ラヴェル:水の戯れ

悪の華
Les Fleurs du mal (1861)

Charlesシャルル Baudelaireボードレール/萩原 學(訳)

悪の花々
FLEURS DU MAL


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113. 血の噴水
CXIII
LA FONTAINE DE SANG

ソネット形式 脚韻AABB AABB CDD CEE

『吸血鬼』の同工異曲。

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ただ、ここでは女に「血を吸われる」のではなく、出血大サービスよろしく自分が街中に「血を流す」幻想を、酒や女に止めて貰おうとして果たせず終わる。その幻想を視覚化できれば解り易い筈だが、そのままの画像は見当たらず、出来るだけ近い流血の絵を、塗り絵アプリ Sexy Colors から提供する。少しばかり刺激的なので、苦手な人はご注意。


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時折、自分の血が流れ出るような気がして、
噴水のようにリズミカルな啜り泣きを伴って。
その長いざわめきを聞いていながら、
その傷口を探しあぐねている、私は。

Il me semble parfois que mon sang coule à flots,
Ainsi qu’une fontaine*1 aux rhythmiques sanglots*2.
Je l’entends bien qui coule avec un long murmure,
Mais je me tâte en vain pour trouver la blessure.

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街を横切り、閉ざされた野原さながら、
血は流れ行き、石畳を群島に変えては、
あらゆる生き物の渇きを癒す、
至る所で自然を紅く染める。

À travers la cité, comme dans un champ clos,
Il s’en va, transformant les pavés en îlots*3,
Désaltérant la soif de chaque créature,
Et partout colorant en rouge la nature.


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私はよく、まことしやかなワインに
恐怖を一日でも眠らせるよう願ったものだが。
却って目は澄み、耳は鋭くなろうとは!

J’ai demandé souvent à des vins captieux*4
D’endormir pour un jour la terreur qui me mine ;
Le vin rend l’œil plus clair et l’oreille plus fine !


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 されば恋に私は求めた、忘却の眠り。
しかし愛は私にとって、針のむしろでしかないものだ。
この残酷な女たちに、飲ませてやるべく作られた!

J’ai cherché dans l’amour un sommeil oublieux ;
Mais l’amour n’est pour moi qu’un matelas d’aiguilles
Fait pour donner à boire*5 à ces cruelles filles*6 !


ラヴェル:水の戯れ


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フランツ・リストエスト邸の噴水』との関係が指摘される本作は、しかし当然ながらラヴェルの色彩を持つ素晴らしい曲に仕上がっており、それだけにピアニストを悩ませるものでもある。噴水らしさは、リストの作品に分があるとは思うが。このような演奏を、寝転がってでも聴けるのは、自分からすればこの上なく快適ではあるけれども、歳をとって集中を欠く証左でもあり、決して他人には見られたくない所でもある。


訳注

*1:「泉」でもあるから、そちらで訳されることもあるが、本作は「噴水」だろう。ボードレール(1821 - 1867) がフランツ・リスト『巡礼の年』(1883)第3年所収『エステ荘の噴水』を聞いていたら面白いのだが、作曲は1867〜1877とされ、どう考えても無理。第2年の『ペトラルカのソネット#104』や『ダンテを読んで』なら、可能性がある

*2:この語については、プーランク Francis Poulenc (1899 -1963)の歌曲集『月並み Banalites』FP.107(1940/1940初演)第5曲が印象的。年代からして詩人が知る筈はなく、作曲家が意識したか知る由もないが、妙に雰囲気は合っているように思う

*3:îlot「小島」の複数形なので「小島の群れ」。訳者はメンデルスゾーン『ヘブリデス諸島(フィンガルの洞窟)』序曲を連想した、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの演奏でどうぞ

*4:翻訳機は「口うるさい」と出力したが、誠実なのではなく、詭弁的に、わざと誤解を招くような表現をかますことを言う

*5:「飲ませる」となっていて、何を飲ませるかは明言されない。当初は普通に「酒を飲ませる」と解釈し、それが一般的のようだが、ここでは「血を飲ませる」と考えるべきであろう

*6:阿部良雄訳注では「12行に示された『娼婦』をおそらく暗示する」としているが、構造的に『吸血鬼』を踏襲する以上、これが人間でないことは明らか。それらしい画像を選んでみたが、思ったほど血の海になっていないようでもある