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【jazz】As Time Goes By 聴き比べ

アラバマ・ソング』で枕にした曲について調べてみた。

As Time Goes By (時の過ぎ行くままに)という名曲

jazz のスタンダード・ナンバーではあるものの、考えてみたら原曲を聴いたことがない気がしてきて調べてみたら、リバイバルヒットというより拾い物だったという話を一つ。

映画『カサブランカ』(1942)より

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カサブランカ』冒頭、リック(ハンフリー・ボガート)のアメリカン・カフェに来たイルザ(イングリッド・バーグマン)のリクエスト、「流行歌」としての As Time Goes By を断り切れないサム(ドーリー・ウィルソン)が歌う。この動画の回想シーンでは、何故かフランク・シナトラの歌に差し替えられている。

ドーリー・ウィルソン Dooley Wilson 

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78rpm single issued on Decca 40006 - As Time Goes By (Herman Hupfeld) by Dooley Wilson with piano and rhythm, recorded in Los Angeles October 11, 1943 .


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ドーリー・ウィルソンは歌手にして俳優だったので、映画でもジャズ・ピアニストとして弾き語りを披露するが。実はピアノを弾けなかったので、音はスタジオミュージシャンのエリオット・カーペンターかジャン・プラマーが入れていたとか、ウィルソンは弾き真似だけしていたとか。とはいえ、ウィルソンの歌あってのこの映画なのは確かで、なのに録音しようとしたらストライキに巻き込まれて叶わなかったとか。

この動画の概要に拠れば、

カサブランカ』の大成功を受け、この古い曲は1943年春に週間ラジオ調査「ユア・ヒット・パレード」で1位に躍り出た。しかし当時続いた「録音差し止めレコード・バン」(音楽家組合のストライキ)のため、消費者が入手できた市販の78回転レコードは、ルディ・ヴァレー楽団による1931年の古い録音2曲の再発売盤のみであった。

ドゥーリー・ウィルソンは映画で「サム」役としてこの曲を歌ったのに、その機会を生かすことができず、映画公開から 10 ヶ月半後、デッカが組合と和解した直後に、この録音を行うまで待つしかなかった。更に、この曲は 1946 年初めまで未発表のままであった。B 面には、同じく彼が映画で歌った「Knock On Wood」を収録。

Knock On Wood by Dooley Wilson

B面も動画になっていたので、次いでにどうぞ。


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ルディ・ヴァリー Rudy Vallèe(1931初録音)

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As Time Goes By

As Time Goes By

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それで代打として、「流行歌」だった当時の、つまり原曲のレコードがリバイバル的に売り出されたのだそうな。歌詞が違うというか、この録音にある(アルバート・アインシュタインを引き合いに出す)社会批判的に長い前置きが『カサブランカ』では省略されている。

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正確には、これも「初録音」であって、初出ではない。元はブロードウェイ・ミュージカル『エブリバディズ・ウェルカム』(Everybody's Welcome)のためにハーマン・フップフェルドが作詞・作曲し、舞台ではフランシス・ウィリアムズが歌ったという。つまり録音は、最初からカヴァーだった。ウィルソンのはカヴァーのカヴァーというところか。

原作者マレー・バーネット

この記事に拠れば、この曲は、映画脚本の原作 Everybody Comes to Rick’s(1940) を書いたマレー・バーネットのお気に入りで、

あまりに頻繁にこの曲を演奏したため、π・λ・φ寮の仲間たちが、彼と彼のビクトローラを窓から投げ捨てると脅したほどだった。

 He played it so much that his Pi Lambda Phi fraternity brothers threatened to throw him and his Victrola out the window. 

という。個人的にはビクターの蓄音機ビクトローラの登場が嬉しい。「クレデンザ1台、家1軒」と謳われた名機である。

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そんなものを個人的に持っているのは、とんでもない金持ちのお坊ちゃんということになるが……、それはさておき。

アルバート・アインシュタインへの言及

記事によると原作では、ヒロインがイルザではなくロイス・メレディス Lois Meredith になっているのと、As Time Goes By の歌詞に違いがある。映画では省略された前置きが、原作にあるということだ。

This day and age we’re living in
gives cause for apprehension,
With speed and new invention,
and things like third dimension.

Yet, we get a trifle weary,
with Mr. Einstein’s the’ry,
So we must get down to earth,
at times, relax relieve the tension.

No matter what the progress,
or what may yet be proved,
The simple facts of life are such
they cannot be removed…

第1節の最後に third dimension とあるのは既に「3次元じゃなくて4次元だろ」と物言いがついて、fourth dimension に訂正されてもいる。何で四次元か、って?三次元に「時間」軸を加えた世界になるからだ。従って、As Time Goes By の歌詞は3種類になる。以下、歌詞の違いにより三派に分類してみよう。

1. 省略派

つまり映画版。だからなのか、黒人が多い

フランク・シナトラ Frank Sinatra 


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筆者がこの歌を知ったのはフランク・シナトラの歌唱で、彼の持ち歌だと思っていた。イメージ的に合っている気はするけれど、上述の前置き省略版、つまり黒人歌手ウィルソンの歌のカヴァーであった。原曲からはカヴァーのカヴァーのカヴァーとなるのか…


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それで再現映像ならぬ作り変え映像?というべきか、イングリッド・バーグマンをゲストに迎えたTVショウで、シナトラが歌っている。なんかちょっと複雑…

チェット・ベイカー Chet Baker 


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チェット・ベイカーは白人のくせにチャーリー・パーカーと共演した人で、インタビューに答えて「オー、パーカーは凄かったよ。俺を守ってくれたよ」と心酔ぶりを顕にしたものだが。考えてみれば、公民権法以前の黒人は奴隷扱い、特に南部では「分離しても平等」という時代であった。その一員として行動を共にしたとなれば、並大抵の根性ではない。だからという訳でもないが、チェットが歌えばきっちり jazz  になっている。レッド・ツェッペリンが何を演っても、ジョン・ボーナムがドラムをドカドカ叩けばハードロック以外の何物でもなくなっていたのと同じ意味で、チェットの歌は jazz  になるのだ。

エラ・フィッツジェラルド


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ルイ・アームストロングと共演したこともあるエラ・フィッツジェラルドは、実に歌の上手い黒人女性で、歌手という点ではチェットの大先輩に当たるけれど。聴いていてちょっと違うのは、この人は Be Bop に浸っていた訳では無いから、そこの違いだと思う。どうも筆者の脳みそは、バップの響きを jazz の雰囲気と思い込んでいるようで、ビル・エヴァンス以降はどうにも jazz に聴こえなかったり。

ジュリー・ロンドン Julie London 


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ジュリー・ロンドンは女優さんでもあったが、小さな頃から歌手だったのが美貌ゆえに女優にもなった人で、ハスキーヴォイスも手伝って、実に雰囲気のある歌い方をする。ジャケ買いして期待を裏切らない、まことに素晴らしい。朝から聞いても構わないが、この歌手がナイトクラブで働いていたということもあり、どちらかというと日が暮れてから照明を暗くして聴く前提だと思う。

ニッキ・パロット Nicki Parrot 


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可愛らしい歌声のニッキ・パロットも、1970年生まれということは、もういい歳というところだろうか。オーストラリアの歌うベーシストで、つい先日、来日していた。結局、行かなかったけど…

ブライアン・フェリー Bryan Ferry 


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すっかりオッサンと化したブライアン・フェリーが、雰囲気たっぷりに語る一席。AOR とか言う感じではなく、jazz にすっかり傾倒している音造り。そう言えば「jazz は大人の音楽」と誰か言っていたが、「マカロニほうれん荘」でネタにされた事もあるブライアン・フェリーに関しては当たっているような。

アンディ・ウイリアムス Andy Williams 


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取り上げてみたものの、アンディ・ウイリアムスについては具体的なイメージが湧かない。名前は知っているし、歌は上手いのだが、フランク・シナトラと重なってしまって……

2. third dimension 派

つまり原曲尊重派。意外と白人が多い

トニー・ベネット Tony Bennett 


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きっちり最初から歌い、それは見事なものだが。third dimension までそのままにしなくても、とは思う。シナトラとは別路線で豪華なショウになる音楽産業的な商品、と言えなくもない。といっても jazz 自体が大いに見世物として持て囃されてこそのビ・バップであったのだから、否定するものでもない。ただ、自分の好みではないな、と言うまで。

ロッド・スチュワート Rod Stewart & クリッシー・ハインド Chrissie Hynde


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意外にも、ロッド・スチュワートは原曲通りに歌っている。いやだから、third dimension までそのままにしなくたって… お供を務めるのは、クリッシー・ハインド。え、ギター持ってないじゃん?どうしてもロックンロールには聞こえないけれど、舞台としては中々。なんか仲良さそうだし。

リー・ワイリー Lee Wiley 


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この人については、Wikipedia 日本語版がまだ無い。つまり日本では人気がない……のだろうか?独特の歌声で、こういう感じが好きな人も多いかと思うのだが。弦楽伴奏ながら、雰囲気は jazz だと思う。

3. fourth dimension 派

ナタリー・コール Natalie Cole 


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ナット・キング・コールの娘であるナタリー・コールは意外にも、fourth dimension と訂正された歌詞を歌っている。というか今のところ、これが唯一のようだ。普通に歌も上手いし、今となってはシナトラの歌唱よりお薦めの一枚。


他にも考えていたことはあったが、忘れてしまった。取り敢えず、良いかな…… 思い出したら追加する。

さて、如何でしたか?お気に召す演奏がありましたら幸いです。


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