カイン。CAIN.
第1幕。ACT I.
第1場。SCENE I.
(アベル、ジラー、アダーとカイン)
- ジラー。ZILLAH.
- 兄さん、不服なの?
- Wilt thou not, my brother ?
- ABEL.
-
どうしてお前が眉をひそめるのかな、
何も良いことはないだろうに、永遠の怒りを
買うだけでは?Why wilt thou wear this gloom upon thy brow,
Which can avail thee nothing, save to rouse
The Eternal anger ?
- アダー。ADAH.
- 最愛のカイン兄様、
貴方までが私にしかめっ面なの? - My beloved Cain,
Wilt thou frown even on me ?
- カイン。CAIN.
-
いや、アダー、そんなことはないよ。
しばらく一人になりたいんだ。
アベル、なんか胸にきてるんだ。まあ、直に収まるだろう…
だから先に行ってくれ、また後で。
そして妹たちよ、お前たちもじっとしてないで。
お前たちの思い遣りを、無下にはしない、
すぐ追いつくから。No, Adah ! no ;
I fain would be alone a little while.
Abel, I'm sick at heart ; but it will pass :
Precede me, brother - I will follow shortly.
And you, too, sisters, tarry not behind ;
Your gentleness must not be harshly met :
I'll follow you anon*1.
- アダー。ADAH.
-
来なけりゃ、
探しに来るからね。If not,
I will Return to seek you here.
- アベル。ABEL.
-
安らかなれ、
貴方の御霊よ、兄様!The peace of God
Be on your spirit, brother !
[アベル、ジラー、アダー退場]
[ Exit ABEL, ZILLAH, and ADAH.
(カインの独白)
- カイン。CAIN (独白 solus. )
-
そしてこれが
人生だ! ……苦労だ! なぜ僕が苦労しなければならない? ……それは
父がエデンの園で、自分の居場所を守れなかったからだ。
僕が一体何をした? まだ生まれてもいなかった、
生まれようともしなかった、気に入りもしなかった
その生まれから来る地位を。なぜ父は
蛇と女に屈したのやら? いや、
屈したなら、なぜ苦しむ? いったい何があった?
木は植えられた。それは父のために、ではないのか?
でなければ、なぜ彼をその近くに、それが育った場所に、
真ん中に一番美しい木を据えたのか?
すべての問いに対する答えはただ一つ、「御諚である、
勿体なくも」のみ。そんなこと、どう理解しろと?
何にも優って全能だから、間違いなく従えと?
僕は結果でしか判断できないが、それは苦いものだ…
自分の落ち度でもないのに、糧としなければならないものだ。
そこに居るのは誰だ?見たところは天使に似るが、
しかし、より厳しく、より悲しげな形相
霊的な本質の……何ゆえ来る、わが身の震え?
彼は何ゆえ恐ろしや、他の霊たち
炎の剣を日々振るう霊たちよりも、
時折、私が佇む門の前
夕暮れ時に、垣間見るとき
私が継いで然るべき庭園を、
不滅の樹々を、夜が閉ざす前に
ケルビムに守られた胸壁の向こうに?
焰ふり翳す天使たちに縮こまらずして、
今近づいてくるあの者の顔を避ける意味があろうか?
しかも、連中よりも遥かに力強く、劣らず
美しい。それでいてなお、嘗ての、
そして本来の美しさに及ばない。悲しみが
その不死性の半分を占めるようだ。…そうだろうか?
人の性を措いて他に、悲しむべきものなど有ろうか?
……来たか。And this is
Life ! -Toil ! and wherefore should I toil ? - because
My father could not keep his place in Eden.
What had I done in this ? -I was unborn,
I sought not to be born ; nor love the state
To which that birth has brought me. Why did he
Yield to the serpent and the woman ? or,
Yielding, why suffer ? What was there in this ?
The tree was planted, and why not for him ?
If not, why place him near it, where it grew,
The fairest in the centre ? They have but
One answer to all questions, " 'twas his will,
And he is good. " How know I that ? Because
He is all - powerful must all - good, too, follow ?
I judge but by the fruits and they are bitter-
Which I must feed on for a fault, not mine.
Whom have we here ? -A shape like to the angels,
Yet of a sterner and a sadder aspect
Of spiritual essence : why do I quake ?
Why should I fear him more than other spirits,
Whom I see daily wave their fiery swords*2
Before the gates round which I linger oft,
In twilight's hour, to catch a glimpse of those
Gardens which are my just inheritance,
Ere the night closes o'er the inhibited walls
And the immortal trees which overtop
The cherubim-defended battlements ? *3
If I shrink not from these, the fire-arm'd angels,
Why should I quail from him who now approaches ?
Yet he seems mightier far than them, nor less
Beauteous, and yet not all as beautiful*4
As he hath been, and might be : sorrow seems
Half of his immortality.*5 And is it
So ? and can aught grieve save humanity ? He cometh.
ルシファー登場。
Enter LUCIFER.
*1:【古】soon.
*2:創世記3章 24 神は人を追い出し、エデンの園の東に、ケルビムと、回る炎のつるぎとを置いて、命の木の道を守らせられた。
*3:智天使(ケルビム)ラテン語 cherub 複数形 cherubin, cherubim は、天使の一種。ja.wikipedia.orgエゼキエル書1章:5 またその中から四つの生きものの形が出てきた。その様子はこうである。彼らは人の姿をもっていた。 6 おのおの四つの顔をもち、またそのおのおのに四つの翼があった。7 その足はまっすぐで、足のうらは子牛の足のうらのようであり、みがいた青銅のように光っていた。8 その四方に、そのおのおのの翼の下に人の手があった。この四つの者はみな顔と翼をもち、9 翼は互に連なり、行く時は回らずに、おのおの顔の向かうところにまっすぐに進んだ。10 顔の形は、おのおのその前方に人の顔をもっていた。四つの者は右の方に、ししの顔をもち、四つの者は左の方に牛の顔をもち、また四つの者は後ろの方に、わしの顔をもっていた。11 彼らの顔はこのようであった。その翼は高く伸ばされ、その二つは互に連なり、他の二つをもってからだをおおっていた。 (中略)15 わたしが生きものを見ていると、生きもののかたわら、地の上に輪があった。四つの生きものおのおのに、一つずつの輪である。 16 もろもろの輪の形と作りは、光る貴かんらん石のようである。四つのものは同じ形で、その作りは、あたかも、輪の中に輪があるようである。17 その行く時、彼らは四方のいずれかに行き、行く時は回らない。18 四つの輪には輪縁と輻とがあり、その輪縁の周囲は目をもって満たされていた。
*4:ヨハネの黙示録22章 16 わたしイエスは、使をつかわして、諸教会のために、これらのことをあなたがたにあかしした。わたしは、ダビデの若枝また子孫であり、輝く明けの明星である」。
*5:イザヤ書14章 12 黎明の子、明けの明星よ、/あなたは天から落ちてしまった。もろもろの国を倒した者よ、/あなたは切られて地に倒れてしまった。


