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【オーディオ】6LU8ミニアンプの謎【jazz】『M meets N』を聴いてみる

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キョオト「すきま」様からご紹介のあったアルバムが妙に気に入ったので、1曲ずつ聴きながらどうぞ。

kyoto-sukima.hatenablog.com

ただ、このディスクがAmazonにもタワーレコードにも売っていないのだけど?非売品だったなら残念。

youtube.com

このアルバムの再生リストがあったので追加。全曲を全自動で聞けます。

6LU8 ミニアンプつれづれ

入力端子の配置

『M meets N』1. True electro*1

youtu.be

friendsofvalves.hatenablog.com

friendsofvalves さんの入手された 6LU8 ミニアンプを見ると、嘗てのエレキットを思い出す縦長配置になっている。電源から初段までに距離を取り、雑音を防ぐに適した設計だと思う。ただ、エレキットでも思ったのだけど、入力回路を引き延ばす形になっているのは良くない。

リアパネルの入力端子から、前面のボリュームまで延びた灰色のケーブル(赤矢印)が見えるだろうか。これが入力回路を形成しているので、往復でアンプ筐体の2倍近い長さとなり、雑音のアンテナになりかねない。だから雑音を防ぐシールド線を使うのだが、シールド線の構造上、静電容量が大きく、ハイ落ちになりやすい。身も蓋もない言い方をすると、もっさりした音になりがち。

『M meets N』2. Flute song *2

youtu.be

このケーブルの長さが諸悪の根源だから、短くしたい。それには入力端子を初段及びボリュームに近づけなくてはならない。そう考えて、入力端子を前面パネルに突き出した作品も過去にはあったが、取り回しの面倒さに誰もが止めてしまった。そこで筆者の提案は、右側面手前に入力端子を移設する(白丸で示す)。これなら前面パネルを触るのに支障なく、縦長筐体なら取り回しも何とかなる。

電源トランスの対角になる=最も遠い位置になるし、ボリュームも初段も直ぐ近くにあって、入力回路を小さくできる。シールド線など使わずとも、撚り線でいけるのではないか。

『M meets N』3. Song mode *3

youtu.be

シールド線を、モガミ電線NEGLEX#2803のような、音の良いケーブルに換えるという手もあるけれど。

ケーブルは好みが別れるし、抜本的な解決にはならないから。

『M meets N』4. Houzey houzey *4

youtu.be

6LU8 五極部の定格

6LU8 五極部はプレート損失14Wと、16A8 の2倍もあるパワフルな定格となっている。

6LU8 Maximum Ratings(Design Maximum Values)
Pentode Section
DC Plate Voltage 400 Volts
Screen Voltage 300 Volts
Plate Dissipation 14 Watts
Screen Dissipation 2.75 Watts
DC Cathode Current 75 Milliamperes
Heater-Cathode Voltage Heater Positive with Respect to Cathode DC component 100 Volts
Total DC and Peak 200 Volts
Heater Negative with Respect to Cathode Total DC and Peak 200 Volts
Grid-Number 1 Circuit Resistant With Fixed Bias 1.0 Megohms
With Cathode Bias 2.2 Megohms
Valb Temperature 210℃

最後の項目は、GE の資料にはなく、Sylvania の資料からとった。こんなのがあるということは、210℃を超える可能性があるわけで、やはり、かなり無理のある設計ではないか。

『M meets N』5. Four beat*5

youtu.be

6LU8 五極部のプレート曲線

それで、どんな動作をするのかプレート曲線を見てみると

肩特性はかなり良い。5極管と称しつつ、ビーム管では?しかも示されているのはスクリーン電圧Ec2 = 120V の時で、Ec2 = 150V では一段と伸びる。

『M meets N』6. Latin funk*6

youtu.be

試しに2.5kΩ負荷線を引いてみたけれど。バイアス -4.0V辺りまでしか駆動できておらず、フルスイングには程遠い。これでもプレート損失は12.5Wに達し、割とギリギリ。プッシュプルで使う球だと思う。

この設定では、プレート電圧250Vのときプレート電流Ib=50mAなので、左右で100mAと、電源トランスの定格に達する。プレート電圧300Vなら Ib=35mAくらいになるから、この辺が実用的だろう。……しかし、10Wを超えるプレート損失の発熱はどうするのだろう?大穴を開けて通気を良くしないと、目茶苦茶熱くなる筈だ。などと考えて、電源トランスの拡大を見たら。

電源は……200V?

『M meets N』7. How are you *7

youtu.be

200V端子を使っているではないか?整流して理論値でも280V少々。改めて上掲の写真からパスコンを見ると、「250V47μF」とあるから、動作点は250V以下。塞流コイルが入った古典的な電源で、加えてセルフバイアスならプレート電圧は200Vそこそこだろうか。放熱孔もないのに、RCの焼けも見当たらない。つまり、最初からあまり電力を食わせず、大して熱を出さない設計と見るべきだろう。ミニアンプだし。……それって、6LU8 を使う意味がないのでは?16A8 で十分だろうに。

たぶんゼネラルトランスPMC-100M

ノグチトランスが店を畳んだもので、今ではメーカーが直販している、たぶん同じ電源トランスがこれ。

www.gtrans.co.jp

思ったより銅損が大きいのか、作例を見ると280V端子からコンデンサ入力でも、340Vくらいまでしか出ないようだ。出力トランスでも15V電圧降下がある。

『M meets N』8. Graduation 

youtu.be

配線は綺麗

このミニアンプは

  • 電源ラインはきっちり撚り合わせ
  • 結束バンドで固定、筐体裏面にぴったり沿わせる
  • 放熱を考えて、R は上に架け、C は吊り下ろす
  • 穴にグロメットを入れて配線を保護

と、配線の見本と言っていいくらい造りは丁寧なのに、球の選定だけ異常としか。作者は、ここまで配線技術を磨きながら、回路設計には興味がないのか?だとしたら筆者には、とても不思議な存在に見える。

『M meets N』9. Eighteen *8

youtu.be

新回路(グリッド接地併用)差動シングル(案)

『M meets N』10. Jet *9

youtu.be

考案した新回路(上條氏のいうコンプリメンタリー差動回路)を、6LU8 で構成してみると

こうなった。初段陰極のバイアス抵抗には、パスコンは付けない。ここに出てくる信号は、終段陰極に入れた 2SA1015 へ流し込む。小信号用トランジスタ 2SA1015 はPNPエミッタ・フォロワとして、ベースで受けた順相信号を電流ブーストし、エミッタから出力する。

結果的にこの球の規格は、6V6GT と大差ないような。違うのはスクリーン電圧 Eg2 を大幅にプレート電圧から下げることになり、ブリーダー抵抗や定電圧ツェナーダイオードのみでは厳しいが、トランジスタの助けがあれば楽勝。スクリーン電流 Ig2 は 3mA くらいあるから、ブリーダー抵抗だけでこれを維持するには 6mA 流す必要があり、無駄遣い甚だしい。これが16A8 だと、Eg2 を下げる必要こそないものの、 Ig2=9mA。もはや絶望的。それで皆様、3結にするかパスコンだけ入れているけれど、毛嫌いしないで Tr 使おうよ。ZD の代わりに RC でも動くし。

回路構成の説明

もう一度、回路構成を説明すると。

  1. 初段でP/K分割と同様に、陽極プレート陰極カソード双方から差動出力を得る
  2. 終段陰極に相補形コンプリメンタリ素子を入れ、これを介して陰極・格子電極グリッド双方へ差動入力する。その結果、シングル・エンドでありながら、差動増幅器として動作し、初段の歪雑音は打ち消される
  3. 終段陰極の増幅素子は、カソード・バイアスを兼ねる(PNPトランジスタのエミッタ電位は、ベース電位+だいたい0.6V)。PNPエミッタ・フォロワとして、カソード電流で駆動され(電源不要)、初段陰極からの非反転信号を電流ブーストして終段陰極へ出力。これまで浪費されていたカソード電力を出力に加算する
  4. PNP型Trの採用により、終段陰極→初段陰極の直流帰還を兼ねる。吐き出すベース電流の増加により、大電流時に初段のバイアスが深くなり、暴走を防ぐ
  5. Trを信号径路とすることにより、陰極パスコンは省略

格子電極から陽極へは反転出力、陰極から陽極へは非反転出力となるから、終段は反転増幅器となる。P-G帰還も掛けているから、教科書通り。

初段で、歪雑音もそのままにP/K分割した波形を、終段で差動増幅するから、歪雑音は打ち消すというより出力の一部と化し、原理的には無歪となる。負帰還と違い、位相ズレなど気にする必要もない。出力インピーダンスを下げる効果はないので、そこはP-G帰還に頼る。

この回路の命名に迷っていて、フィード・フォワードの一種になる気もするし。上條さんが言う「コンプリメンタリ差動回路」の意味が漸く解った気もするけれど。やはりそれは世間一般的に、サンスイのダイアモンド差動回路のように「差動増幅器のコンプリメンタリ・ペア」を指す言葉ではあるまいか。回路の在り方からは「グリッド接地併用アンプ」「差動入力シングルアンプ」「ひょっとしてフィード・フォワード増幅器」などと考えられるけれど。だんだん長くなるのも鬱陶しいので、「差動シングル」と簡潔にしたい。しかし、それで通用するのかとなると、はて?

Different Differential Amplifier の先行提案

反転増幅器としての原理的には、Different Differential Amplifier の一種として解説されているのと同じだ。

www.tubecad.com

しかし、上條さんが考えた「コンプリメンタリー差動回路」には至っていないし、初段からの差動出力で駆動することまでは考えていないようだ。反転/非反転信号が不揃いでも問題ないことは指摘されており、これはシングルならではの利点と言える。

『M meets N』11. Remember to my honey *10

youtu.be

電源も、(たぶん)改善の余地がある。B電源は、整流子を接地した方が音は良くなる。電源トランスから複数の電圧を取る時は、この手は使えないが。単電源なら問題ない。また、シリコンダイオードにもサージ定格は存在するので、保護抵抗は入れるべき。

A電源も、ヒーター巻線が複数あるので、平衡接続ができる。これならAC点火でも、ハムは抑えられるだろう。

作例を見てみる。

ここまで書いておいて何だが、6LU8アンプの作例を見ていなかった。検索できたうち、興味深いものを。

Mini Amp by Jon Stanley

www.electronixandmore.com

菓子缶で作った、ミニアンプというより手乗りアンプ。Altoids box というのは、Altoids というミントキャンディの缶。

小さ過ぎて片チャンネル、別電源。この球を選んだという訳ではなく、そこにあるものを組み合わせて作ったそうな。音が出るだけでも大したものという他はない。

B電源は、電灯線のAC120Vをそのまま整流。6LU8の肩特性が良好なので、これでも実用になるのだろう。トランスレスという奴で、わが国では感電の可能性が高く、先ほど禁止されたと記憶する。

a single ended 6LU8 amplifier by 968driver

www.diyaudio.com

diyAudio 掲示板の1ページで、話題はプッシュプルアンプなのだけど。一番下に、今回のミニアンプと似た形のシングルアンプ。

これはお見事。B電源は、ハモンドの電源トランスに 550VCT 90mA DC とあるから、整流すると 777V(理論値)に達する。これを 400V(+バイアス電圧)以下に収まるよう、整流管を入れ、塞流コイルを二段にしている。何でそんな……と驚いてしまうが、これも手元にあったのだろう。ちょっと羨ましい。しかしそうすると、得られるのは400Vに近いはずで、熱対策は見えないのに大丈夫なのだろうか。

こうなるともはや、フルスイングなど狙う意味もなく、プレート損失14W以内に収まることだけを考えて、5kΩ負荷線を引いてみる。たぶん動作点を400V20mA辺りに置いて、出力15Wまで確保しているのだろう。こんな使い方も有りなのか、考えてみればmA単位の電流よりも、V単位の電圧を上げた方が、出力増には有利な筈だ。線形性は悪くなるけれど、提案した差動シングル回路が目論見通り動いてくれれば、歪雑音は0になるので問題ない。

この考え方は、ミニアンプ改良にも応用できるだろう。(おそらく)ノグチトランスの高い方は280Vだから、350Vなら行けそうだ。動作点350V30mA、バイアス-15Vにしてみてはどうだろう?供給電圧は+30Vくらい要るだろうから、塞流コイルは外すことになりそうだが。6V6系と似たような動作をしているから、似たような良い音を出してくれる筈で、その上で350Vは、6V6 系では禁断の領域だ。

*1:曲名に反してエレクトロ要素がない……

*2:此方は曲名通りにフルートが主役。ラテンというよりエンヤトット的な、何と言ったか忘れたとある癖のあるリズム

*3:曲名は意味不明ながらピアノ大活躍

*4:曲名はいよいよ意味不明、ドラムソロから開始

*5:5番目なのに4ビートとな?お前はデイヴ・ブルーベックか寺島靖国か

*6:実はラテン人とはローマ人だったりするから

*7:I'm not fine, No thank you

*8:エレクトロニカ

*9:「噴出」とは別に「黒玉(木の化石)」の意味もあるのだけど、はて、どちら?

*10:「4月の思い出」という曲もあったのを思い出す