キョオト「すきま」様からご紹介のあったアルバムが妙に気に入ったので、1曲ずつ聴きながらどうぞ。
ただ、このディスクがAmazonにもタワーレコードにも売っていないのだけど?非売品だったなら残念。
このアルバムの再生リストがあったので追加。全曲を全自動で聞けます。
6LU8 ミニアンプつれづれ
入力端子の配置
『M meets N』1. True electro*1
friendsofvalves.hatenablog.com
friendsofvalves さんの入手された 6LU8 ミニアンプを見ると、嘗てのエレキットを思い出す縦長配置になっている。電源から初段までに距離を取り、雑音を防ぐに適した設計だと思う。ただ、エレキットでも思ったのだけど、入力回路を引き延ばす形になっているのは良くない。

リアパネルの入力端子から、前面のボリュームまで延びた灰色のケーブル(赤矢印)が見えるだろうか。これが入力回路を形成しているので、往復でアンプ筐体の2倍近い長さとなり、雑音のアンテナになりかねない。だから雑音を防ぐシールド線を使うのだが、シールド線の構造上、静電容量が大きく、ハイ落ちになりやすい。身も蓋もない言い方をすると、もっさりした音になりがち。
『M meets N』2. Flute song *2
このケーブルの長さが諸悪の根源だから、短くしたい。それには入力端子を初段及びボリュームに近づけなくてはならない。そう考えて、入力端子を前面パネルに突き出した作品も過去にはあったが、取り回しの面倒さに誰もが止めてしまった。そこで筆者の提案は、右側面手前に入力端子を移設する(白丸で示す)。これなら前面パネルを触るのに支障なく、縦長筐体なら取り回しも何とかなる。

電源トランスの対角になる=最も遠い位置になるし、ボリュームも初段も直ぐ近くにあって、入力回路を小さくできる。シールド線など使わずとも、撚り線でいけるのではないか。
『M meets N』3. Song mode *3
シールド線を、モガミ電線NEGLEX#2803のような、音の良いケーブルに換えるという手もあるけれど。
ケーブルは好みが別れるし、抜本的な解決にはならないから。
『M meets N』4. Houzey houzey *4
6LU8 五極部の定格
6LU8 五極部はプレート損失14Wと、16A8 の2倍もあるパワフルな定格となっている。
6LU8 Maximum Ratings(Design Maximum Values)
| DC Plate Voltage | 400 Volts | ||
|---|---|---|---|
| Screen Voltage | 300 Volts | ||
| Plate Dissipation | 14 Watts | ||
| Screen Dissipation | 2.75 Watts | ||
| DC Cathode Current | 75 Milliamperes | ||
| Heater-Cathode Voltage | Heater Positive with Respect to Cathode | DC component | 100 Volts |
| Total DC and Peak | 200 Volts | ||
| Heater Negative with Respect to Cathode | Total DC and Peak | 200 Volts | |
| Grid-Number 1 Circuit Resistant | With Fixed Bias | 1.0 Megohms | |
| With Cathode Bias | 2.2 Megohms | ||
| Valb Temperature | 210℃ | ||
最後の項目は、GE の資料にはなく、Sylvania の資料からとった。こんなのがあるということは、210℃を超える可能性があるわけで、やはり、かなり無理のある設計ではないか。
『M meets N』5. Four beat*5
6LU8 五極部のプレート曲線
それで、どんな動作をするのかプレート曲線を見てみると

肩特性はかなり良い。5極管と称しつつ、ビーム管では?しかも示されているのはスクリーン電圧Ec2 = 120V の時で、Ec2 = 150V では一段と伸びる。
『M meets N』6. Latin funk*6

試しに2.5kΩ負荷線を引いてみたけれど。バイアス -4.0V辺りまでしか駆動できておらず、フルスイングには程遠い。これでもプレート損失は12.5Wに達し、割とギリギリ。プッシュプルで使う球だと思う。
この設定では、プレート電圧250Vのときプレート電流Ib=50mAなので、左右で100mAと、電源トランスの定格に達する。プレート電圧300Vなら Ib=35mAくらいになるから、この辺が実用的だろう。……しかし、10Wを超えるプレート損失の発熱はどうするのだろう?大穴を開けて通気を良くしないと、目茶苦茶熱くなる筈だ。などと考えて、電源トランスの拡大を見たら。
電源は……200V?
『M meets N』7. How are you *7

200V端子を使っているではないか?整流して理論値でも280V少々。改めて上掲の写真からパスコンを見ると、「250V47μF」とあるから、動作点は250V以下。塞流コイルが入った古典的な電源で、加えてセルフバイアスならプレート電圧は200Vそこそこだろうか。放熱孔もないのに、RCの焼けも見当たらない。つまり、最初からあまり電力を食わせず、大して熱を出さない設計と見るべきだろう。ミニアンプだし。……それって、6LU8 を使う意味がないのでは?16A8 で十分だろうに。
たぶんゼネラルトランスPMC-100M
ノグチトランスが店を畳んだもので、今ではメーカーが直販している、たぶん同じ電源トランスがこれ。
思ったより銅損が大きいのか、作例を見ると280V端子からコンデンサ入力でも、340Vくらいまでしか出ないようだ。出力トランスでも15V電圧降下がある。

『M meets N』8. Graduation
配線は綺麗
このミニアンプは
- 電源ラインはきっちり撚り合わせ
- 結束バンドで固定、筐体裏面にぴったり沿わせる
- 放熱を考えて、R は上に架け、C は吊り下ろす
- 穴にグロメットを入れて配線を保護
と、配線の見本と言っていいくらい造りは丁寧なのに、球の選定だけ異常としか。作者は、ここまで配線技術を磨きながら、回路設計には興味がないのか?だとしたら筆者には、とても不思議な存在に見える。
『M meets N』9. Eighteen *8
新回路(グリッド接地併用)差動シングル(案)
『M meets N』10. Jet *9
考案した新回路(上條氏のいうコンプリメンタリー差動回路)を、6LU8 で構成してみると

こうなった。初段陰極のバイアス抵抗には、パスコンは付けない。ここに出てくる信号は、終段陰極に入れた 2SA1015 へ流し込む。小信号用トランジスタ 2SA1015 はPNPエミッタ・フォロワとして、ベースで受けた順相信号を電流ブーストし、エミッタから出力する。
結果的にこの球の規格は、6V6GT と大差ないような。違うのはスクリーン電圧 Eg2 を大幅にプレート電圧から下げることになり、ブリーダー抵抗や定電圧ダイオードのみでは厳しいが、トランジスタの助けがあれば楽勝。スクリーン電流 Ig2 は 3mA くらいあるから、ブリーダー抵抗だけでこれを維持するには 6mA 流す必要があり、無駄遣い甚だしい。これが16A8 だと、Eg2 を下げる必要こそないものの、 Ig2=9mA。もはや絶望的。それで皆様、3結にするかパスコンだけ入れているけれど、毛嫌いしないで Tr 使おうよ。ZD の代わりに RC でも動くし。
回路構成の説明
もう一度、回路構成を説明すると。
- 初段でP/K分割と同様に、陽極・陰極双方から差動出力を得る
- 終段陰極に相補形素子を入れ、これを介して陰極・格子電極双方へ差動入力する。その結果、シングル・エンドでありながら、差動増幅器として動作し、初段の歪雑音は打ち消される
- 終段陰極の増幅素子は、カソード・バイアスを兼ねる(PNPトランジスタのエミッタ電位は、ベース電位+だいたい0.6V)。PNPエミッタ・フォロワとして、カソード電流で駆動され(電源不要)、初段陰極からの非反転信号を電流ブーストして終段陰極へ出力。これまで浪費されていたカソード電力を出力に加算する
- PNP型Trの採用により、終段陰極→初段陰極の直流帰還を兼ねる。吐き出すベース電流の増加により、大電流時に初段のバイアスが深くなり、暴走を防ぐ
- Trを信号径路とすることにより、陰極パスコンは省略
格子電極から陽極へは反転出力、陰極から陽極へは非反転出力となるから、終段は反転増幅器となる。P-G帰還も掛けているから、教科書通り。

初段で、歪雑音もそのままにP/K分割した波形を、終段で差動増幅するから、歪雑音は打ち消すというより出力の一部と化し、原理的には無歪となる。負帰還と違い、位相ズレなど気にする必要もない。出力インピーダンスを下げる効果はないので、そこはP-G帰還に頼る。
この回路の命名に迷っていて、フィード・フォワードの一種になる気もするし。上條さんが言う「コンプリメンタリ差動回路」の意味が漸く解った気もするけれど。やはりそれは世間一般的に、サンスイのダイアモンド差動回路のように「差動増幅器のコンプリメンタリ・ペア」を指す言葉ではあるまいか。回路の在り方からは「グリッド接地併用アンプ」「差動入力シングルアンプ」「ひょっとしてフィード・フォワード増幅器」などと考えられるけれど。だんだん長くなるのも鬱陶しいので、「差動シングル」と簡潔にしたい。しかし、それで通用するのかとなると、はて?
Different Differential Amplifier の先行提案
反転増幅器としての原理的には、Different Differential Amplifier の一種として解説されているのと同じだ。

しかし、上條さんが考えた「コンプリメンタリー差動回路」には至っていないし、初段からの差動出力で駆動することまでは考えていないようだ。反転/非反転信号が不揃いでも問題ないことは指摘されており、これはシングルならではの利点と言える。
『M meets N』11. Remember to my honey *10
電源も、(たぶん)改善の余地がある。B電源は、整流子を接地した方が音は良くなる。電源トランスから複数の電圧を取る時は、この手は使えないが。単電源なら問題ない。また、シリコンダイオードにもサージ定格は存在するので、保護抵抗は入れるべき。

A電源も、ヒーター巻線が複数あるので、平衡接続ができる。これならAC点火でも、ハムは抑えられるだろう。
作例を見てみる。
ここまで書いておいて何だが、6LU8アンプの作例を見ていなかった。検索できたうち、興味深いものを。
Mini Amp by Jon Stanley

菓子缶で作った、ミニアンプというより手乗りアンプ。Altoids box というのは、Altoids というミントキャンディの缶。
小さ過ぎて片チャンネル、別電源。この球を選んだという訳ではなく、そこにあるものを組み合わせて作ったそうな。音が出るだけでも大したものという他はない。

B電源は、電灯線のAC120Vをそのまま整流。6LU8の肩特性が良好なので、これでも実用になるのだろう。トランスレスという奴で、わが国では感電の可能性が高く、先ほど禁止されたと記憶する。
a single ended 6LU8 amplifier by 968driver
diyAudio 掲示板の1ページで、話題はプッシュプルアンプなのだけど。一番下に、今回のミニアンプと似た形のシングルアンプ。

これはお見事。B電源は、ハモンドの電源トランスに 550VCT 90mA DC とあるから、整流すると 777V(理論値)に達する。これを 400V(+バイアス電圧)以下に収まるよう、整流管を入れ、塞流コイルを二段にしている。何でそんな……と驚いてしまうが、これも手元にあったのだろう。ちょっと羨ましい。しかしそうすると、得られるのは400Vに近いはずで、熱対策は見えないのに大丈夫なのだろうか。

こうなるともはや、フルスイングなど狙う意味もなく、プレート損失14W以内に収まることだけを考えて、5kΩ負荷線を引いてみる。たぶん動作点を400V20mA辺りに置いて、出力15Wまで確保しているのだろう。こんな使い方も有りなのか、考えてみればmA単位の電流よりも、V単位の電圧を上げた方が、出力増には有利な筈だ。線形性は悪くなるけれど、提案した差動シングル回路が目論見通り動いてくれれば、歪雑音は0になるので問題ない。
この考え方は、ミニアンプ改良にも応用できるだろう。(おそらく)ノグチトランスの高い方は280Vだから、350Vなら行けそうだ。動作点350V30mA、バイアス-15Vにしてみてはどうだろう?供給電圧は+30Vくらい要るだろうから、塞流コイルは外すことになりそうだが。6V6系と似たような動作をしているから、似たような良い音を出してくれる筈で、その上で350Vは、6V6 系では禁断の領域だ。

