微熱を出したりして動けなくなり、しかし咳が止まらないという訳でもなく、ただ起きて居られない。食欲もない… と考えていて、漸く夏バテと気付いた。去年も同じで、点滴受けるまで治らなかったのだった。病院に行くのもつらいが、仕方ない。また音楽の力に頼るしかない。
Red by King Crimson
いつの『ロッキング・オン』だったか忘れてしまったが。キング・クリムゾンのロバート・フリップ御大が、インタビューに答えて話していた事が引っ掛かっている。
「『レッド』は明確なヘヴィメタルだ」
Red(1974)は、第2期キング・クリムゾンの掉尾を飾る傑作だ。とは言え、昨今のメタルキッズがコレを聴いても、「?」と首を傾げるのではあるまいか。大黒天(大黒さんではなくマハーカーラ)のような有無を言わせぬ暗黒感重圧感は文句ないものの、所謂「ヘヴィメタル」な疾走感は感じられない演奏ばかりだから。
なお、この図のマハーカーラは福の神である。されこうべを戴く忿怒相の仏尊がなぜ福の神なのかというと、足下にヒンズーの福の神ガネーシャを踏んでいるから。ヒンズー図像では、このように圧倒されている神の権能を、圧倒している神が奪う事になっているのだ。お約束としてこれを知っていないと、とても福の神には見えないけれど、そういう訳でこの大黒天は福の神である。
Tyranny and Mutation by Blue Öyster Cult
閑話休題。それから暫くして、ふと思いついて取り出したアルバムがある。
ブルー・オイスター・カルトの名は知っていても、聴いたことのない子供たち、眉を顰める子供たちも多いことだろう。音楽好きの友人も GODZILLA を聴いて「悪くないがビシッと来ない」と二流またはB級の判定を下し、それが間違いとも言い難いのがこのバンドで、しかし Heavy Metal を看板に掲げた最初のバンドでもある。
『暴虐と変異』(1972)は初期に出したシリーズの1枚というかセカンドアルバムで、この時期のものならヘヴィメタルと称するに違和感ないスタイル、つまりきちんと緩急つけた疾走感を持つ演奏になっている。で、筆者が愚考するに、フリップ御大が言ったヘヴィメタルとは、コレのことではないか。
『暴虐と変異 Tyranny and Mutation』曲目
A面 The Black
- 赤と黒 The Red & the Black
- 世界は俺のもの O.D.'d on Life Itself
- 天国への特急便 Hot Rails to Hell
- 7人の荒くれ 7 Screaming Diz-Busters
B面 The Red
- ベイビー・アイス・ドッグ Baby Ice Dog
- 堕ちた翼 Wings Wetted Down
- 10代の射手 Teen Archer
- 塩鮭色の女王様(生石灰の娘) Mistress of the Salmon Salt (Quicklime Girl)
『レッド Red』曲目
A面
- レッド Red
- 堕落天使 Fallen Angel
- 再び赤い悪夢 One More Red Nightmare
B面
- 神の導き Providence
- スターレス Starless
『暴虐と変異』は筆者も LPレコードを買っていなかったので確かめようもないのだが、A面は黒、B面は赤。曲目は『赤と黒』(…スタンダール?)に始まり、『塩鮭姫あるいは石灰娘』に終る。対して『レッド』は、ジャケット意匠からしてモノクローム写真を使い、黒と赤。ジャケット裏はレッドゾーンに振り切れたVUメータで、もしかしたら元は表裏逆だったかもしれない。ジョン・ウェットンに拠れば、B面 の Starless は当初、Starless and Bible Black として、同名のアルバムに収録される筈がお蔵入りし、何故か本作に収録されたということだから、アルバム・コンセプトは「赤に始まり黒に終る」であったと見える。その辺の詰めの甘さは、フリップ御大が元々、修辞学的文学的な才能に欠けた上、発表後に解散を宣言するほど切羽詰まっていたからか。しかし時期的にも、このように考えると、御大の意図は明らかであろう。……と思うのだが、そのような意見は全く見られない^^;
もし筆者の思いつきが当たっていれば、「明確」な御大の意図は全く伝わっていない事になる。さて果たして。