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【音楽】ヘヴィメタルの源?キング・クリムゾン『レッド』の(たぶん)ネタ元

微熱を出したりして動けなくなり、しかし咳が止まらないという訳でもなく、ただ起きて居られない。食欲もない… と考えていて、漸く夏バテと気付いた。去年も同じで、点滴受けるまで治らなかったのだった。病院に行くのもつらいが、仕方ない。また音楽の力に頼るしかない。

Red by King Crimson


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レッド SHM-CDレガシー・コレクション1980

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いつの『ロッキング・オン』だったか忘れてしまったが。キング・クリムゾンロバート・フリップ御大が、インタビューに答えて話していた事が引っ掛かっている。

「『レッド』は明確なヘヴィメタルだ」

Red(1974)は、第2期キング・クリムゾンの掉尾を飾る傑作だ。とは言え、昨今のメタルキッズがコレを聴いても、「?」と首を傾げるのではあるまいか。大黒天(大黒さんではなくマハーカーラ)のような有無を言わせぬ暗黒感重圧感は文句ないものの、所謂「ヘヴィメタル」な疾走感は感じられない演奏ばかりだから。
六臂のマハーカーラ。カパラを手にするタントラの護法神。17世紀後半、中央チベット
なお、この図のマハーカーラは福の神である。されこうべを戴く忿怒相の仏尊がなぜ福の神なのかというと、足下にヒンズーの福の神ガネーシャを踏んでいるから。ヒンズー図像では、このように圧倒されている神の権能を、圧倒している神が奪う事になっているのだ。お約束としてこれを知っていないと、とても福の神には見えないけれど、そういう訳でこの大黒天は福の神である。

Tyranny and Mutation by Blue Öyster Cult

閑話休題。それから暫くして、ふと思いついて取り出したアルバムがある。


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ブルー・オイスター・カルトの名は知っていても、聴いたことのない子供たち、眉を顰める子供たちも多いことだろう。音楽好きの友人も GODZILLA を聴いて「悪くないがビシッと来ない」と二流またはB級の判定を下し、それが間違いとも言い難いのがこのバンドで、しかし Heavy Metal を看板に掲げた最初のバンドでもある。


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『暴虐と変異』(1972)は初期に出したシリーズの1枚というかセカンドアルバムで、この時期のものならヘヴィメタルと称するに違和感ないスタイル、つまりきちんと緩急つけた疾走感を持つ演奏になっている。で、筆者が愚考するに、フリップ御大が言ったヘヴィメタルとは、コレのことではないか。

『暴虐と変異 Tyranny and Mutation』曲目

A面 The Black
  1. 赤と黒 The Red & the Black
  2. 世界は俺のもの O.D.'d on Life Itself
  3. 天国への特急便 Hot Rails to Hell
  4. 7人の荒くれ 7 Screaming Diz-Busters
B面 The Red 
  1. ベイビー・アイス・ドッグ Baby Ice Dog
  2. 堕ちた翼 Wings Wetted Down
  3. 10代の射手 Teen Archer
  4. 塩鮭色の女王様(生石灰の娘) Mistress of the Salmon Salt (Quicklime Girl)

『レッド Red』曲目

A面
  1. レッド Red
  2. 堕落天使 Fallen Angel
  3. 再び赤い悪夢 One More Red Nightmare
B面
  1. 神の導き Providence
  2. ターレス Starless

『暴虐と変異』は筆者も LPレコードを買っていなかったので確かめようもないのだが、A面は黒、B面は赤。曲目は『赤と黒』(…スタンダール?)に始まり、『塩鮭姫あるいは石灰娘』に終る。対して『レッド』は、ジャケット意匠からしモノクローム写真を使い、黒と赤。ジャケット裏はレッドゾーンに振り切れたVUメータで、もしかしたら元は表裏逆だったかもしれない。ジョン・ウェットンに拠れば、B面 の Starless は当初、Starless and Bible Black として、同名のアルバムに収録される筈がお蔵入りし、何故か本作に収録されたということだから、アルバム・コンセプトは「赤に始まり黒に終る」であったと見える。その辺の詰めの甘さは、フリップ御大が元々、修辞学的文学的な才能に欠けた上、発表後に解散を宣言するほど切羽詰まっていたからか。しかし時期的にも、このように考えると、御大の意図は明らかであろう。……と思うのだが、そのような意見は全く見られない^^;
もし筆者の思いつきが当たっていれば、「明確」な御大の意図は全く伝わっていない事になる。さて果たして。