[POETIC LABORATORY] ★☆★魔術幻燈☆★☆

詩と翻訳、音楽、その他諸々

【吸血鬼】【悪の華】ボードレール『理想』に見る「夜」と「リリス」、「イナンナ」から「タンホイザー」に至る有りそうにもない可能性

夜 Nyx は何処から来たのか

kimihikohiraoka.hatenablog.com

挿絵は塗り絵アプリColor Planet から。ボードレール『理想』を論じる平岡公彦氏のブログを再読していて、何か引っかかる気がして。

Tannhäuser by Richard Wagner 1967(LI)

www.youtube.com Conductor: Wolfgang Sawallisch
Orchestra & Chorus: Teatro alla Scala
Tannhäuser: Hans Beirer
Elisabeth: Sena Jurinac
Wolfram von Eschenbach: Victor Braun
Venus: Janis Martin

珍しくも美神ウェヌスが出てくるオペラ、ワーグナー『タンホイザー』を聞きつつ、リリスやヘカテーと吸血鬼を併せ論じたノセール氏のブログとニコニコ動画を(久々に)視聴。

www.vampire-load-ruthven.com

ここで、リリスの像として紹介された、バーニーの浮彫あるいは夜の女王と呼ばれるものは、おそらく読者諸君にも見覚えがあろう。しかし、その表す姿が誰のものであるかは、未だ明らかではない。

バーニーの浮彫あるいは夜の女王

この高浮彫は紀元前1800〜1750年、メソポタミアのイシン・ラルサ時代または古バビロニア時代に制作されたと推定されるテラコッタ板で、全裸にして翼と鳥の足を持つ女神らしき人物を描き、その左右にフクロウを配し、足下に獅子2頭を踏む。

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この女神が何者であるかについては、地母神イシュタル/イナンナ*1とも、冥府の女王エレシュキガルとも、はたまた夜の女王ともリリスとも言われており、古代メソポタミアに於ける神霊の一柱に違いないという以上のことは正直よくわからない。

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ヘカテーの系図

まとめられた系図は複数の説を貼り合わせたもので、同時に存在はしなかった関係も含まれているようだが。後述する通り、リリスはウルガタ訳聖書に於てラミアと翻訳され、また文献によっては、そのラミアは、エンプーサの別名ともされた。エンプーサは変身能力を持つ妖怪♀で、アリストパネース『蛙』やピラストラトス『テュアナのアポローニオス伝』に出てくる。女神ヘカテーに使役される者とも、ヘカテーの娘たちとも言われる。もっとも、子供の悪戯を戒める為に「悪い子には○○が来るぞ」的な悪役なまはげにされていた存在でもあり、誇張して伝えられた可能性もある。

John William Waterhouse (1849–1917) Lamia(1909)

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エンプーサはヘカテー

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エンプーサについては、使える画像が見つからない。変身能力ゆえ正体不明ということだろうか?ただ、昆虫の、というかカマキリの Empusa fasciata という種類があって、華やかな擬態を見せる。Empusa の名も「雌蟷螂」の意味らしいから、あるいはこれが素かもしれない。

May 3, 2011, Gideon Pisanty: Empusa fasciata, female, Mount Carmel, Israel.
This file is licensed under the Creative Commons Attribution 3.0 Unported license.

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アリストパネースに拠れば、エンプーサはヘカテーと同一神。このことは、WILLIAM G. RUTHERFORD がラヴェンナ写本から編訳した『アリストパネース注釈集』SCHOLIA ARISTOPHANICA(1896) 所収 RANAE 第293行への注に記す。

……『タゲニスタエ』に於けるアリストパネースの描写に従えば、エンプーサはヘカテーと同一。
A.  「汝、地獄のヘカテーよ、蛇の体くねらせ給う。」
B.  「なぜエンプーサを呼び出す?」

. . . Empusa is identical with Hecate, as Aristophanes in the Tagenistae.
A. "And thou, O Hecate of Hell, wriggling thy coils of snakes."
B. "Why summon Empusa?"

判り難いかな?Aがヘカテー召喚の呪文を唱えたのに、Bは「何でまたエンプーサとか」と非難している。これは、ヘカテー=エンプーサという図式が、少なくともアリストパネース作品の聴衆には、共通する前提だったことになる。

ヘカテーはギリシャ神話で重きをなす月の女神。雷神ゼウスが生まれたとき、父神クロノスに食われないよう逃がしてやった恩人でもある。アルテミス、セレーネーと混淆し、3柱で月の三態を示すものともされた。この「三形態のヘカテー」(ヘカテー・トリモルポス)は、一部の名を変えてローマ神話にも引き継がれた。

  • ヘカテー=新月:「死」「再生」
  • セレーネー(ルーナ)=満月:「成熟」
  • アルテミス(ディアーナ)=三日月:「誕生」

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マイケル・ドレイトン『月に居る人 The Man in the Moone』

この事が書いてあるというので、探してきた。シェイクスピア『真夏の夜の夢』に、月の中の人が出てくるのも、この題の捩りだろうか。Hecate が H ECATE、Neptune  が N EPTUNE と綴られていたりと、文字起こしの問題がある上に、かなり長くなるので、訳出は別途にする。

www.poetrynook.com

先の系図にない親子関係の説もある。目下翻訳中の『死霊術師』関連を調べていて見つけた事で、シチリアのディオドーロスに拠ればヘカテーが、魔女キルケーやメーデイアの母であるという。魔術の神でもあるヘカテーに、メーデイアは施術に当たり力添えを願っているし、キルケーもその薫陶を得ており、親族関係があっても不思議ではない。

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ホメロス『オデュッセイアー』第10巻に於て女神キルケー*2に死霊術を教わったオデュッセウスは、第11巻で「オーケアノスの涯」へ渡り冥府に入り、数多の亡霊共々、予言者ティレシアスを召喚し行末を占っている。オデュッセウスの行状からは、「魔女」の概念はなかったこと、魔術は神の力の行使であったこと、死霊術も魔術の一分野であったことなどが窺える。残念なことに、ホメロスはヘカテーにもリリスにも一切言及していない。但し明らかに「三叉路トリウィアのヘカテー」を意識したと思われる描写もある。

「…冥王の昏く湿っぽい館へとおいでなさい。そこにはアケオロスの沼へと燃える火の河ピュリプレゲトン号泣の河コキュトスが流れ込んでいて、この河はまったく憎悪の河ステュクスの分流ですが、岩のところで二つの河がひどい轟きを立てながら合流しております。それからつぎにその場所へ、…穴を掘るのです、そしてそのまわりに、あらゆる亡者のための供養の灌奠ライベイションをそそぎかけるのです。…」(呉茂一訳)

蛇足開始

より混乱を増すべく、筆者からも追加しよう。リリスの姿とも見られる「バーニーの浮彫」が、フクロウを従えた「夜の女王」というのなら、この姿はローマ神話のニュクス、ギリシャ神話のアテーナーなどの源ではあるまいか?なお、この種のフクロウは一般に screech owl と呼ばれ、女の悲鳴のような鳴き方をする。欽定訳聖書ではリリスをこの名に英訳しているようだが、実物は可愛らしいものだ。


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ギリシャ神話の「夜」Nýxニュクス

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ギリシャ神話の「ニュクス」は、ヘーシオドス『神統記』に拠れば原初の神カオスの娘であり、エレボス(幽冥)の妹にして妻。2人してヘーメラー(昼)、アイテール(上天の清気)、カローン(地獄の渡し守)の両親。

Généalogie à une génération de Chaos Juliensechaud75
CC BY-SA 4.0

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他にヒュプノス(熟睡)とタナトス(死)の双子、オネイロス(夢)、モイライ(運命の三女神)、ヘカテー(月)などの母。オルフェウス教では、ウーラノス(天空)、ガイア(大地)の母。

モーツァルト『魔笛』から夜の女王

はたまた、「夜の女王」というなら「夜の女王のアリア」だろう。


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夜の女王に対立するザラストロは、ペルシャの国教であった拝火教の開祖ゾロアスター(ニーチェの著作ではツァラトゥストラ、紀元前7世紀頃)の事だから、新アッシリア王アッシュールバニパルと同時代だった可能性がある。

ラファエロ『アテナイの学堂』右端。天球を手にする髭面がザラスシュトラ

ご存知アッシュールバニパル王。こんな時でも腰帯にペンを挟み、書記であることを主張

多神教に反発しての新興宗教開祖だから、アッシリアを含むメソポタミアに対しても、ツァラトゥストラは攻撃的だった事だろう。


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では、ゾロアスターと対立した夜の女王とは、何者だったか。それがリリスではなかったか。

…シャマシュ?

もう一つ。バーニーの浮彫に於ける女神の被り物にご注目。

螺旋模様の帽子。何処かで見た気がして、並べてみたのはハンムラヒの法典石柱頭部の浮き彫り。ヘルメットのようにツルンとした帽子を被って立つハンムラヒ王に、計量具である物差しと巻き尺を与える神の姿は、正義を司る太陽神シャマシュと言われる。シャマシュの帽子を被るからである。筆者は、バビロンの都市神マルドゥクのコスプレまたはシャマシュの権能を奪った姿と考える。シャマシュの特徴は、帽子にしか見られないからである。その同じ帽子を、バーニーの浮彫に見る女神が被るのだとしたら?この「夜」は、太陽神=正義を受け継いだ存在ということにならないか。それとも「夜」が「昼」に取って代わるということだろうか?だとしたら、「夜」から「昼」に代わる「朝」の像が有っても良さそうだが。リリスまたはイナンナ/イシュタルあるいはエレシュキガルと見られるこの像が何れのものであるにせよ、フクロウを引き連れた「夜」及び「死」の象徴には違いないから、それが「正義」とは、どんな暗黒時代だったのだろう。南無阿弥陀仏。……は、未だこの時代に存在していなかったか。


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王権奪取?

「バーニーの浮彫」では女王の鳥脚が獅子を踏んで立つ。このような構図は、仏教に於けるマハーカーラ像の場合、踏みつけにした神の権能を奪う(引き継ぐ)ことを意味する。

home.catv-yokohama.ne.jp

同じ発想が、この浮彫にもあるのではないか。というのは、王権を獅子に象ったと見られるアッシリアの浮彫が遺るからである。

これはメトロポリタン美術館の所蔵になる石膏像で、紀元前883–前859年頃の新アッシリア時代、アッシュールナツィルパル2世の治世に造られたと推定されている。

人頭有翼獅子像

この翼のあるライオンは、アッシュールナツィルパル2 世の宮殿の門扉や入り口に置かれた、翼のある野獣を描いた巨大な石像のひとつであり、支配者を悪から守り、宮殿を訪れるすべての者を圧倒することを目的に造られました。ライオンは古代中近東の神像によく見られる角のついた被り物をし、脚が5本あります。

というのだが……「被り物」をよく見てみよう。上に見たのと、同じ形をしていないかな?角がついたのではなく、シャマシュの渦巻きだろう。つまり、バビロニアの正統(王権)を継ぐ者という主張であると、筆者は見ている。

では、その獅子を「夜の女王」が踏んで立つとしたら?

しかも女王は、シャマシュの帽子を被っているのだ。

目の所が穴ぼこになっているのでハニワのように見えてしまうけれど、元は眼球を象った宝石が嵌っていたらしい。加えて色鮮やかに着色されていたそうだが、正直こちらは見たくもない。

文献上のリリス

ともあれ、文献上のリリスを確認しようとしたが。


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聖書にある…というより無いリリス

聖書に魔女リリスの事が書いてある……と思いきや、検索しても出てこない。邦訳版では「夜の魔女」と訳された箇所が唯一らしい。

イザヤ書34章

14 野の獣はハイエナと出会い、鬼神はその友を呼び、夜の魔女もそこに降りてきて、休み所を得る。

翻訳の問題も一因らしく、別名にされているもの複数。特にヒエロニムスのウルガタ訳以来、Lamia と訳す聖書多数。英語版 Wikipedia から比較してみると

Lilithとするイザヤ書34章14節

New American Bible

Wildcats shall meet with desert beasts, satyrs shall call to one another; There shall the Lilith repose, and find for herself a place to rest.

Masoretic Text

,וּפָגְשׁוּ צִיִּים אֶת-אִיִּים, וְשָׂעִיר עַל-רֵעֵהוּ יִקְרָא; אַךְ-שָׁם הִרְגִּיעָה לִּילִית, וּמָצְאָה לָהּ מָנוֹח

And shall-meet wildcats with jackals the goat he-calls his- fellow lilit (lilith) she-rests and she-finds rest

Lamia とするイザヤ書34章14節

Latin Bible

et occurrent daemonia onocentauris et pilosus clamabit alter ad alterum ibi cubavit lamia et invenit sibi requiem

Wycliffe's Bible (1395、イザヤ書34章15節)

Lamya schal ligge there, and foond rest there to hir silf.

The Bishops' Bible of Matthew Parker (1568) 

there shall the Lamia lye and haue her lodgyng.

Douay–Rheims Bible (1582/1610) 

And demons and monsters shall meet, and the hairy ones shall cry out one to another, there hath the lamia lain down, and found rest for herself.

Screech Owl とするイザヤ書34章14節

The Geneva Bible of William Whittingham (1587)

and the screech owl shall rest there, and shall finde for her selfe a quiet dwelling.

King James Version (1611)

The wild beasts of the desert shall also meet with the wild beasts of the island, and the satyr shall cry to his fellow; the screech owl also shall rest there, and find for herself a place of rest.

リリスの由来は?

語源俗解では、リリス Lilith の名が表すのは、ヘブライ語の語根 laylâ(夜)に由来する夜の悪魔とされる。学術的にはシュメール語のlíl (風)から借用されたアッカド語 lilītu(m)のヘブライ語形 lilu(m)の女性形で、元来は風や嵐に関わるメソポタミアの不妊の女悪魔であったとする説が有力。

fr.wikipedia.org

死海文書4Q510–511

ヘブライ語またはアラム語の用語 lilith が初めて明確に使用されているのは、Dead Sea Scrolls(死海文書)4Q510–511の一部。名前だけで、その性格などは不明。

そして之なる指導者は、彼の誉れ高き壮観を、破壊の天使や私生児・悪魔・リリス・吠え猛る者その他(砂漠の住人など)の霊、そして前触れもなく人々に取り憑き、理解の精神から人々を遠ざけようとする霊たちを全て、畏怖させ、恐慌に陥れる壮観を宣言する。

And I, the Instructor, proclaim His glorious splendor so as to frighten and to te[rify] all the spirits of the destroying angels, spirits of the bastards, demons, Lilith, howlers, and [desert dweller...] and those which fall upon men without warning to lead them astray from a spirit of understanding.

リリスの物語
The Story of Lilith

最古のリリス伝承は『ベン・シラのABC Alphabet of ben Sirach、אלפא-ביתא דבן סירא〔Alpā-Bethā də-Ben Sirā〕』と呼ばれるヘブライ語聖書注解書で、700〜1000年頃にイスラム圏内で書かれた。

en.wikipedia.org

リリス伝承をまとめたサイトがあり、『ベン・シラのABC』が英訳されているので、読んでみる。他にPDFで公開されているものもある。

平安時代の作品だから、それっぽく擬古文及び歴史的仮名遣いにしてみた。慣れれば難しくないので、歴史的仮名遣ひを覚えていない人もこの機会にどうぞ。

www.jinja.co.jp

ベン・シラのABC第5問
The Alphabet of ben Sira Question #5 (23a-b)

その後まもなく、王の幼き息子、病に倒る。ネブカドネザル王、のたまふに「わが息子を治せ。さもなければ、お前を殺す。」
ベン・シラ、即ち座して聖名しるせるお守り奉り、医学つかさどれる天使たちの名・姿・かたち・翼・手・足を描けり。ネブカドネザル王、お守り御覧ごらふじてのたまはく「そ彼や?」

Soon afterward the young son of the king took ill, Said Nebuchadnezzar, “Heal my son. If you don’t, I will kill you.” Ben Sira immediately sat down and wrote an amulet with the Holy Name, and he inscribed on it the angels in charge of medicine by their names, forms and images, and by their wings, hands, and feet. Nebuchadnezzar looked at the amulet. “Who are these?”

「医療を司る天使、スンヴィ・スンスヴィ・スムングロフにさうらふ
神は、アダム一人を創りたまひしのち、『人がひとりでいるのは良くない』と仰せられ*3。アダム創り給ひしに同じく、女性を土から創りアダムに給ひ、リリスと名付け給ふ。
アダムとリリス、いさかひ始め。女は『は下にはいねず』と申し、男は『吾はが下には寝ず、上になるのみ。汝は下になるがふさわしく、吾こそ上になるべきなり』とぞ申す。リリス応へて『共に土から造られし身、何ら等しからざるはなし』
二人互いに耳貸さず。はやらちあかぬとリリス見て、不可言の名*4:を唱ふるや、空へ飛び去れり。
アダムは創造主が前に跪き祈り。『万物の主よ!賜りし女、逃げおほせり。』即ち聖なる御方(祝福あれ)、之に連れ戻すべく、天使三人つかはし給ふ。」

   “The angels who are in charge of medicine: Snvi, Snsvi, and Smnglof*5. After God created Adam, who was alone, He said, ‘It is not good for man to be alone‘ (Gen. 2:18). He then created a woman for Adam, from the earth, as He had created Adam himself, and called her Lilith. Adam and Lilith began to fight. She said, ‘I will not lie below,’ and he said, ‘I will not lie beneath you, but only on top. For you are fit only to be in the bottom position, while am to be in the superior one.’ Lilith responded, ‘We are equal to each other inasmuch as we were both created from the earth.’ But they would not listen to one another. When Lilith saw this, she pronounced the Ineffable Name and flew away into the air. Adam stood in prayer before his Creator: ‘Sovereign of the universe!’ he said, ‘the woman you gave me has run away.’ At once, the Holy One, blessed be He, sent these three angels to bring her back.

「聖なる御方、アダムに宣はく。
『もし彼女、戻らむとうべなはば、それでよし。諾はざれば、日に百人の子供、死に至るべし。』
御使みつかひたち、神の御許みもとを離れ、リリス追ふ。エジプト人の溺れ死ぬべし大いなる水、大海原おほうなはらに追い詰め給ふ。
御使たち神の言を伝えしかども、彼女は戻るを諾はず。御使たち宣はく『汝を海に沈めむ』と。」

   “Said the Holy One to Adam, ‘If she agrees to come back, fine. If not she must permit one hundred of her children to die every day.’ The angels left God and pursued Lilith, whom they overtook in the midst of the sea, in the mighty waters wherein the Egyptians were destined to drown. They told her God’s word, but she did not wish to return. The angels said, ‘We shall drown you in the sea.’

「『離れたまへ!』と曰く、『吾が創られし所以は、ただ赤児が病、罹らさんが為。もし赤児が男子なら、吾が手の許に有るは生まれてから8日の間、女子なら20日の間。』」

   “ ‘Leave me!’ she said. ‘I was created only to cause sickness to infants. If the infant is male, I have dominion over him for eight days after his birth, and if female, for twenty days.’ ”

   「リリスの言葉を聞ける御使たち、帰還を強く求むるも。彼女かく誓えり、『有って有る』神の名にかけて。曰く
『如何なる時も、神、または神の名、あるいは護符に描かれし似姿、吾に見えれば、その赤児に吾が力は何ら及ぼさじ』
して彼女、おのが子を日に百人死なせること諾へり。それゆえ、日に百体の悪魔滅ぶ也。同時に、同じ理由にて、幼い子供たちの護符に我等は御使たちの名を記し置く。その名を認めしリリスは自らの誓ひに従ひ、さればその子は治る也。」

   “When the angels heard Lilith’s words, they insisted she go back. But she swore to them by the name of the living and eternal God*6: ‘Whenever I see you or your names or your forms in an amulet, I will have no power over that infant.’ She also agreed to have one hundred of her children die every day.*7 Accordingly, every day one hundred demons perish, and for the same reason, we write the angels’ names on the amulets of young children. When Lilith sees their names, she remembers her oath, and the child recovers.”


途中だが、一旦ここまでとする。

訳注

*1:
シュメール(南部バビロニア)神話における豊穣神イナンナ(Inanna)が、アッカド(北部バビロニア)の女神イシュタル(Ishtar)と習合し、同一神と看做されるに至ったもので、どちらの呼び名も正統
*2:
オデュッセウスは、キルケーを「美しい女神」「神女ニュムペー」と崇めている。ギリシャ神話は本邦の記紀神話と同様、多種多様な神々が直接に人間と関わるものであり、悪魔も天使も出てこない
*3:
創世記2:18。時系列はやや混乱しており、創世記1章の終わりに

26 神はまた言われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、地のすべての這うものとを治めさせよう」。27 神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。

と神の創造を描きながら、創世記2章で

20 それで人は、すべての家畜と、空の鳥と、野のすべての獣とに名をつけたが、人にはふさわしい助け手が見つからなかった。21 そこで主なる神は人を深く眠らせ、眠った時に、そのあばら骨の一つを取って、その所を肉でふさがれた。22 主なる神は人から取ったあばら骨でひとりの女を造り、人のところへ連れてこられた。

と、別伝を示している。ところが、見識の狭いユダヤ/キリスト教徒は、「別伝」という概念を理解せず「神の創造は二度行われた」と曲解したため、「アダムには前妻があった」などという椿説がまかり通る事となった。離婚を禁じた建前上「再婚した」というのも憚られ、「前妻」は存在を抹消された「魔女」だった、という解釈に至った
*4:
神名。神聖四文字テトラグラマトンを呪文として唱えた、ということ。出エジプト記20章

7 あなたは、あなたの神、主の名を、みだりに唱えてはならない。主は、み名をみだりに唱えるものを、罰しないでは置かないであろう

というので、ユダヤ/キリスト教徒には禁じられているのだが、それゆえに力ある言葉と看做され魔術に用いられ、この場合はソロモン王を介し魔術すなわち神通力を行使するものとされる
*5:
天使の名は正直、読み方が解らない。日本語版Wikipediaではセノイ(Senoy)、サンセノイ(Sansenoy)、セマンゲロフ(Semangelof)とする
*6:
出エジプト記3章

14 神はモーセに言われた、「わたしは、有って有る者」。また言われた、「イスラエルの人々にこう言いなさい、『「わたしは有る」というかたが、わたしをあなたがたのところへつかわされました』と」。

*7:
似たようなことを古事記でやっているのは興味深い。

最後に、其の妹なる伊邪那美命いざなみのみこと、おん身自ら追ひ來ります。其の黃泉比良坂よもつひらさかへ「千引石ちびきのいは」引き塞ぐに、其の石置く中、おのおの對立、事戸ことどわたらせ給ふ之時、伊邪那美命のことば「我が愛しき那勢命よ、此の如く爲さば、汝が國の人草、一日千頭絞め殺さむ。」次に伊邪那岐命のみことのり「我が愛しき那邇妹命よ、汝の然し爲さば、吾は一日千五百の產屋うぶや立てむ。」是を以て、一日必ず千人死す、一日必ず千五百人生む也。

【音楽】夏【オーディオ】空想回路実験:ブリッジ整流回路・両波倍電圧整流回路

Color Planet 塗り絵より


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www.discogs.com

youtu.be

空想回路実験
ブリッジ整流・両波倍電圧整流


www.youtube.com Adrian Brew: Thera Hun Ginjeet

friendsofvalvesさんの送信管アンプ電源に使われる予定の倍電圧整流が気になったので、夏を感じる曲をかけつつ、整理しておきたい。

friendsofvalves.hatenablog.com

エリオット四重奏団:ショスタコーヴィチ第4弦楽四重奏曲


www.youtube.com

Live from the Carinthischer Sommer Festival, July 2025

(The Eliot Quartett performed the complete Shostakovich string quartet cycle at the Carinthischer Sommer Festival).

Eliot Quartett: Maryana Osipova, Alexander Sachs, Dmitry Hahalin, Michael Preuß

ブリッジ整流回路

ブリッジ整流回路は、電源トランスにセンタータップが無くても両波整流できるB-3の回路がよく使われる。

ブリッジ整流:正の半周期

ブリッジ整流:負の半周期

このように、正負いずれの半周期に於ても整流子2石を通るので、整流子による電圧降下はシリコンダイオードの場合、順方向電圧Vf の2倍、つまり1.2V前後になる。


www.youtube.com ベートーヴェン 第1弦楽四重奏曲 トッパンホール・アンサンブル

ブリッジ整流による正負2電源

センタータップ付の電源トランスに使うと、B-1・B-2に示す正負2電源が得られる。図は違うけれど、B-1とB-2は同じ回路で、シミュレータではB-2の描き方が一般的。

センタータップ付ブリッジ整流:正の半周期

センタータップ付ブリッジ整流:負の半周期

 

センタータップを接地するから正負2電源になるので、正負それぞれに1石ずつ整流子を通るから、合わせて1.2Vの電圧降下があるのは変わりない。ただ、正負それぞれに0.6Vなのであまり目立たない。


www.youtube.com  Robert Fripp : The New World 

両波倍電圧整流回路

半波倍電圧整流回路というのもあって、これをハシゴしたコッククロフト・ウォルトン回路というのが粒子加速器の電源になってたりするけれど、今回は扱わない。

シリコンダイオードを使う方が簡潔で判り易いだろう。

両波倍電圧整流:正の半周期

両波倍電圧整流:負の半周期

正の半周期でコンデンサC2を充電、負の半周期でC1を充電、合わせて2倍の出力電圧を得る回路で、センタータップのない電源トランスが使える。整流子も2石で済む。
但し電圧が倍増した分、電流は半減する点に注意。


www.youtube.com

整流管による倍電圧整流

「整流管 倍電圧整流」で検索すると、AIが「倍電圧整流に整流管は使いません」などと世迷言を言ってくるけれど、もちろんそんな事はなく、このように接続すればよい。ヒーター巻線は共用できない点に注意。上述の通り、正の半周期と負の半周期に1本ずつ整流子が有ればよいので、6W46AX4など、単極のダンパー管が使える。


www.youtube.com

提案された回路の検討

それでは、提案された回路と比較しよう。B-1・B-2と同様のブリッジ整流だが、双極ダンパー管を使い、正負2電源ではなく倍電圧及び等圧を得る。

ブリッジ整流回路は両波整流回路の一種で、問題になりそうなのは整流子による電圧降下が2倍になること。上述の両波倍電圧整流と比較してみよう。

倍電圧整流:正の半周期

倍電圧整流:負の半周期

……あれ?電圧降下は同じじゃね?しかもブリッジ整流の方が電流半減がなくて、電力的には有利そうだ。センタータップ無しの方が回路は簡潔だけど、電力的にも雑音的にも不利な感じ。これは意外!

結局、整流管2本分の電圧降下は避けられず、それならブリッジ整流の方が充実した音になりそうだ。何れにしても高圧を扱うから、手袋などして安全には十分に配慮して頂きたいが、良い結果が出ることを楽しみに。


最後に、国内の良さげな四重奏団をもう一つ。応援のつもりで。


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【jazz】蓮の花 Lotus Blossom

蓮の花

掲げた絵は Color Planet 塗り絵から。凛太郎氏の「ことばを旅する」ブログで季節柄、蓮の花が取り上げられた。

yamato-kotoba.hatenablog.com

本邦にては「お盆の花」のような扱いを受けている蓮の花だが、もちろん西洋にも存在し、「泥中から伸び上がり、花を咲かせる」点ではボードレール『悪の華』にも通じるものがある。実際、『悪の華』エピローグ(未発表)に於て、詩人はパリに対し

おまえは私に泥をくれた、私はそれを黄金に変えた

Tu m’as donné ta boue et j’en ai fait de l’or

と歌っている。とはいえ、冠婚葬祭を仏教でやる日本と、キリスト教の欧米では視線の温度が違うので、たぶん蓮の花を見る感慨も違うのだろう。蓮の地下茎は蓮根として食用に供され、葉も花も食えるそうだが、そういう目で見てしまうのも日本人ゆえだろうか。

lovegreen.net

cutting-edge-research.toyaku.ac.jp

ともあれ、「蓮の花」を聴いてみよう。というか、自分がケニー・ドーハムの Lotus Blossom を聴きたくなったので、この一曲から始める。

Kenny Dorhum: Lotus Blossom 


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しょぼくれたジャケットの顔はさておき、いつ聴いてもかっこいいトランペットだ。同じ「蓮の花」でありながら、お盆の雰囲気は微塵もなく、前へ前へと駆り立てる騎士が跨る駿馬のような「蓮の花」だが、蓮の花にも香りがあるそうだから、その香りが風に乗って威勢よくかっ飛んでいくといったところか。実際はすぐ近くまで寄らないと解らないらしいが。

Chick Corea Trio


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蓮台ならぬ鍵盤上のコマネズミよろしく走り回るチック・コリアに、何処かのトムさんのようなベースとドラムがついていく忙しそうな演奏。主題は 1:20 辺りまで出てこない。

 Freddie Hubbard/Woody Shaw Double Take


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フレディ・ハバードとウディ・ショウの双頭セッション。ブルーノート録音なのにECMみたいな、クリアだが冷めた感じの音は残念

Bobby Shew Quintet


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主題はケニー・ドーハムのそれに忠実。チェット・ベイカーのフリューゲルホルンをトランペットと見間違えた一件から、なるべく確かめるようになったが、これはトランペットだ。

Michael Franks: Lotus Blossom 


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これはマイケル・フランクス独自の曲。むさ苦しくヒゲを伸ばしたこのおっさんが、繊細可憐な「蓮の花」を歌ってみせるのだから、人生って難しい。ラジオでこの歌声に惹かれて探してみたら、このおっさん顔というのはキツいものがあり、「男性差別は止めろ」と非難されれば(ヒゲは毎朝剃っているにしろ)同じおっさんとして笑うしかないけれど、できれば顔を隠したジャケットにして欲しかった。などと思わず書いてしまうほどには繊細可憐な「蓮の花」である。

Billy Strayhorn: Lotus Blossom

Duke Ellington


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此方はデューク・エリントンの片腕ビリー・ストレイホーンの作曲になる「蓮の花」。デューク自ら「愛好曲」と語るこの映像も素敵だが、それなら歌を聴いてみたいとも思ってしまった。

Carol Sudhaltar


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それで探した結果がこれで、なかなか良いと思うのだが。視聴回数1桁、いいね無しの寒い現状に一石を投じてきた。

Chris Potter


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概要欄に示された奏者がどの楽器か解らないのは如何なものかと……

Underground Quartet:

  • Musician: Chris Potter
  • Musician: Craig Taborn
  • Musician: Wayne Krantz
  • Musician: Nate Smith

Composer Lyricist: Billy Strayhorn

Fred Hersch


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デュークの向こうを張ってか、訥々と語るピアノ・ソロ。「歌う」より「語る」この感じがいい。

シューマン『蓮の花』

エリー・アメリンク(s)


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クラシックにもあるのを見落としていた「蓮の花」。映像で遺っているとは思わなかった。結果的に、蓮の花のイメージに一番近いような。

Andrew Goodwin (t)


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Lynette Alcántara


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Pops Mohamed: Lotus Blossom 

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  1. Elevator Music
  2. Deluxe Clock
  3. Healing Broadway
  4. Free Lunch
  5. Sekunjalo
  6. Chilli Scan
  7. No More Gurus

Lotus Blossom という曲ではなくアルバム。とっくに廃盤になってしまったけれど、埋もれさせるには惜しく、再現を試みる。

Elevator Music


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Deluxe Clock 

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Healing Broadway


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Free Lunch 


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Sekunjalo


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Chilli Scan


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No More Gurus 


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他にも多くの演奏があるけれど、映像になっているものが思ったより少ないのは残念。

Pops Mohamed の存在は知らなかったから、これはよい機会だった。

【テクノ】祝再発!スクリッティ・ポリッティ『Cupid & Psyche 85』

スクリッティ・ポリッティ Cupid & Psyque 85

数年前にリマスター盤が出ていたようにも思うが、再び商魂たくましくも、スクリッティ・ポリッティの名盤 Cupid & Psyche 85 がまた製造販売されることになった。

YouTube Music に配信されていたので、聴いてみる。だいたいニュー・ウェイブかエレクトロ・ポップに分類されているようだが、私の中ではテクノ・ポップの亜流だ。

  1. The Word Girl(Remaster)
  2. Small Talk(Remaster)
  3. Absolute(Remaster)
  4. A Little Knowledge(Remaster)
  5. Don't Work That Hard(Remaster)
  6. Perfect Way(Remaster)
  7. Lover to Fall(Remaster)
  8. Wood Beez (Remaster)
  9. Hypnotize(Remaster)
  10. Flesh & Blood(Remaster)
  11. Absolute (Version-Remaster)
  12. Wood Beez (Version-Remaster)
  13. Hypnotize (Version-Remaster)
  14. Perfect Way (Version-Remaster)
  15. Lover to Fall (12" Dance Mix-Remaster)
  16. Perfect Way (12" Dance Mix-Remaster) 

その名の通り、原盤は前世紀85年に出たので、もはや歴史の彼方。だったはずが、発売に伴い YouTube Music に上がってきたので、お懐かしやというところ。当時は LP レコードからコンパクト・ディスクへの移行期だったから、当然ながら LP と CD の両方買って聴き比べ、当然ながら音の厚みに於てキレに於て、CD は LP は遠く及ばない事を確認してしまったのであるが。今回の配信はやゝ一本調子ながら、音の勢いは上々。「ハイレゾ・オーディオ」なんぞ影も形も無かった時代、元の録音はこれだけ生々しい音がしていたのを、緻密で豊かな響きと共に掘り起こせたのは、むしろ「ハイレゾ」にこそふさわしく、ディジタル・オーディオの恩恵というべきか。アナログファンとしては少し悔しい気持ちがしないでもない。

今回配信された内容そのままを此処に貼る事はできないので、既存の音源を貼っておく。

The Word Girl 


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Small Talk 


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Absolute 


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A Little Knowledge 


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Don't Work That Hard 


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Perfect Way 


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Lover To Fall 


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Wood Beez


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Hypnotize 


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Flesh and Blood 


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このアルバムについては、今でこそブラック・ミュージックの影響とか何とか格好つけて言われているようだけど。こんなカネの掛かってなさそうな、変な音楽が本邦でも流行ったのは、ひとえに「ディスコの音」だったからだ。変に凝った変拍子などは避け、初心者にも踊り易い単純なリズムに乗っているだけで格好がついたから、一般大衆にもウケたのだ。


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ローリング・ストーンズでさえ『エモーショナル・レスキュー』なんて頭のおかしくなりそうなアルバムを出したくらい、踊り狂った時代だったのだ。いや、奴等は元からおかしかったが。

バナナラマ『ヴィーナス』とかカイリー・ミノーグ『ロコ・モーション』とか、リバイバルがウケたのも単純に踊れる曲だったからだ。


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改めて聴くと、ディスコ音楽は何で盛り上がった末に廃れるか、よくわかる。単純なリズムゆえに似たような曲に為りやすく、変化新鮮はアイデア頼りだったのが単純ゆえに、何れはネタが尽きてしまうのだ。似たようなリバイバルでも、ツイステッド・シスターズ『リーダー・オブ・ザ・パック』はディスコどころか珍走な映像だったから、時代雰囲気的に合わず一般にはウケなかった。いくら原作に忠実といっても、やはり限度はあるものだ。


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ちなみにマドンナ『ライク・ア・ヴァージン』も、「ディスコでガンガン大きな音を聞くと良いのだ」とか言われていたけれど、実際に聞くと無表情な声がますます大きく恐ろしいまでであって、全く良い事は無かったのだ。あくまで個人的な感想だが。

【jazz】チェット・ベイカーとフリューゲルホルン

Let's get Lost (Film version)(2026 Remaster)

YouTube Music にアルバムが上がっていたので、聴くともなしに聞いていたら


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思い出すこともあったので、まとめてみる。

ビューグル Bugle の音


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ウォルター・スコット卿がビュルガーのゴシック・バラッドを英訳した The Wild Huntsman をご紹介したところであるが、このバラッドでは進軍ラッパ Bugle-horn が活躍する。

poetlabo.hatenablog.jp

恥ずかしながら、これまで Bugle と Trumpet の違いを理解していなかったのが、この翻訳で初めて解った。森林伯が吹く Bugle は「ラッパ」そのものなのに、これまでラッパ = トランペットと理解していたので、なんで trumpet を Bugle と呼ぶのか不思議でならなかったが、別の楽器と解ってからは何の不思議もない。

ja.wikipedia.org

ただ、同じ名前でフランスでは、フリューゲルホルンを称する。というが、バルブを除いて考えると、フリューゲルホルンは明らかに、トランペットよりビューグルの系譜に属するものだろう。

ja.wikipedia.org


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チェット・ベイカーのフリューゲルホルン

それで思い出したのが、フリューゲルホルンを吹いていたチェット・ベイカーだ。たぶん放送用録音録画の、こんな動画があった。

Time After Time 


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Isn't It Romantic 


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So What 


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Autumn Leaves 


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Bye bye, Blackbird 


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Airegin


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一時期フリューゲルホルンがお気に召したとか、一本調子な楽器で結局スタイルに合わなかったとか、聞いた話はいろいろ。それと意識して聴いてみても、自分の音を出すのに苦労しているようには見えない。フリューゲルホルンについて否定的な意見を言うところは見たことがない。ただ、好きな楽器でも質に入れてヤクをやるような人なので、ご自身のお話があんまり信用できないという、なかなか厄介なところも。このことについて、マラソン・セッションでフリューゲルホルンを使っていたという話がある。

チェット・ベイカーのマラソン・セッション

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上述の通り、違う楽器だとは思ってなかったので、まったく意識していなかった。ジャケット写真でもトランペットらしき絵が混ざってるし。

以下はアルバムの内容になるので、動画といっても絵は動かないし。通して聴きたい人は YouTube へ飛んだ方が便利だと思う。

参加人員 personnel

  • Chet Baker - flugelhorn
  • George Coleman - tenor saxophone
  • Kirk Lightsey - piano
  • Herman Wright - bass
  • Roy Brooks - drums

Smokin'

So Easy 


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Fine and Dandy 


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Have You Met Miss Jones?


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Grade "A" Gravy 


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Serenity 


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Rearin' Back 


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Boppin'

Go-Go


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Lament for the Living


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Pot Luck


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Bud's Blues


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Romas


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On a Misty Night


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Groovin'

Madison Avenue


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Lonely Star


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Wee, Too


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Tan Gaugin


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Cherokee


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Bevan Beeps


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Comin' on

Comin' On


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Stairway to the Stars


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No Fair Lady


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When You're Gone


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Choose Now


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Chabootie


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Carpsi's Groove


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曲名は後に Carpsie's groove と改題される。微妙過ぎて指摘されなかったのか、Wikipedia でも e を入れた綴りになっている。

Cool Burnin'

Hurry


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I Waited for You


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The 490


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Cut Plug


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Beaudoir


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曲名を Wikipedia では Boudoir に作る。

Etude in 3


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Sleeping Susan


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以上、チェット・ベイカーのフリューゲルホルンばかり集めてみたのだが……いかがでしたか?
正直、聞いただけでは、筆者にはトランペットとの違いが解らない。金管の音が好きな方なら、間違えることはないと思われるのだけど。
チェットが如何に優れたラッパ吹きだったのかは、つくづく実感。

【エピナル版画】青い鳥 L’Oiseau bleu (Épinal)

青い鳥(エピナル版画工房/絵物語1860年)
 L’Oiseau bleu (Imagerie d’Épinal — Contes des Fées 1860)

原作:ド・オーノワ夫人(Madame d'Aulnoy, 1650 - 1705)
版画:エピナルのペルラン
邦訳:萩原 學

エピナル版画
Images d’Épinal

『鈴を着けた少女』(1854以前)は、『青い鳥』及び『眠れる森の美女』を下敷きにしたということであったが。

poetlabo.hatenablog.jp

この『青い鳥』は、時期的にメーテルリンクの作品(1908)では有り得ない。が、誰のどんな作品か知らなかった。しかしBGMとして貼ったチャイコフスキーのバレエ『眠れる森の美女』から、思わぬ進展が。

whichbook.hatenablog.com

はてなブログ『珠玉の児童書の世界』に拠ると、チャイコフスキー『眠れる森の美女』の一部分が『青い鳥』であり、その原作はオーノワ夫人の作品(1697)だと言うではないか。バレエ自体はさして興味を持たなかったから、これは意識に無かった。


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fr.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

Madame d’Aulnoy の訳として「オーノワ夫人」「ドーノワ夫人」と二通りあるのは、d’Aulnoy(De Aulnoy) の読み方にあり、現地では続けて発音するため「ドーノワ夫人」と聞こえ、字面では「オーノワ伯爵の夫人」だから冠詞を外して読む、ということのようだ。それで、ここでは折衷して「ド・オーノワ夫人」と読むことにする。正式には Marie-Catherine Le Jumel de Barneville, baronne d’Aulnoy という長たらしい名前で、ここからドーノワ男爵夫人 Baroness d'Aulnoy、後にドーノワ伯爵夫人 Countess d'Aulnoy となり、Marie-Catherine d'Aulnoy とも呼ばれ、「誰?」と言いたくなってしまう。

物語は、ATU 432 (The Prince as Bird; The Bird Lover)類型。王子様が呪いで鳥になってしまう、恋人の献身によりその呪いが解かれるという、変身譚が軸となる。

 

青い鳥
L’Oiseau bleu

絵物語
LIVRE D’IMAGES.

エピナルのペルラン社
PELLERIN & CIE. à ÉPINAL. 

昔々、とても裕福な王様がありました。妻を亡くした後、再婚し、生き写しな娘のフロリーヌを、新しい王妃とその娘トゥルイトンヌに紹介しました。フロリーヌはお日様のように美しく、一方トゥルイトンヌ Truitonne は鱒 truite のように赤い斑点が顔中にあって、髪は汚れて肌は脂ぎって、一目で嫌悪感を催すほどでした。

Il était une fois un roi fort riche qui, devenu veuf, s’était remarié et présenta sa fille Florine, qui était belle comme le jour, à la nouvelle reine et à sa fille Truitonne*1 qu’on appelait ainsi parce que son visage était rempli de taches de rouge comme une truite et que ses cheveux sâles et crasseux et sa peau huileuse la rendaient dégoutante à voir.

とある日、王は王妃に告げて曰く。フロリーヌとトゥルイトンヌは結婚適齢期であり、宮廷にやってくる最初の王子に何れか嫁がせるべしと。……ほどなくして、「白馬の王子」と呼ばれる若き貴族が宮廷を訪れますと、王妃はトゥルイトンヌを嫁がせようとしたにも関わらず、彼はフロリーヌへの愛を告白しました。

Le roi dit un jour à la reine que Florine et Truitonne étaient en âge de se marier et qu’il fallait faire en sorte d’en donner une au premier prince qui viendrait à la cour. — Peu de temps après un jeune seigneur appelé le prince Charmant*2 vint à la cour et déclara son amour à Florine, en dépit de la reine, qui voulait lui présenter Truitonne.

フロリーヌは継母の要請で塔に閉じ込められました。Florine est enfermée dans une tour à la demande de sa belle-mère.

フロリーヌに勝てなかったことに絶望し、慰めようもないほど悲しんだ女王とトゥルイトンヌは、「白馬の王子」が滞在中、塔へのフロリーヌ幽閉を王に認めさせました。……直ちに覆面の男たちが哀れな娘を捕らえ、塔の頂上まで連れていき、絶望の淵に置き去りにしてしまいました。

La reine désespérée et Truitonne inconsolable de n’avoir pas la préférence sur Florine, obligèrent le roi à consentir que pendant le séjour du prince Charmant, on enfermerait Florine dans une tour. — Aussitôt des hommes masqués s’emparèrent de la pauvre fille, la portèrent au haut de la tour et l’y laissèrent dans la dernière désolation.

王子は、ベールをかぶった女性をフロリーヌと信じて、指輪を差し出します。

「白馬の王子」の従者である若い貴族はフロリーヌに同情し、侍女に頼んでフロリーヌを塔の窓辺に呼び出し、自分の主人と話をさせることにしました。しかし、そのことを侍女から聞きつけた王妃は、代わりにベールを被せたトゥルイトンヌを窓辺に立たせ、騙された「白馬の王子」は信頼の証として、指輪を渡してしまいました。

Un jeune Seigneur de la suite du prince Charmant, touché de compassion pour Florine, obtint d’une servante qu’elle ferait venir Florine à la fenêtre de la tour pour causer avec son maître : mais la reine instruite par la confidente même fit mettre à la fenêtre Truitonne voilée, et le prince charmant trompé lui donna sa bague comme gage de sa foi.

3. 報復 Le châtiment

空飛ぶ椅子を翼あるカエル2 匹が牽く。

翌日、待ち合わせ場所に再び現れた王子様は、フロリーヌだと思い込んだ彼女を連れ去ることに決め、翼あるカエルが引く空飛ぶ椅子に乗せました。……彼女に永遠の忠誠を誓い、その願いに応じて、その名付け親である妖精スーシオのもとへ連れて行きました。

Le lendemain le prince Charmant revint au rendez-vous et comme il avait décidé d’enlever celle qu’il croyait Florine, il la fit monter dans une chaise volante attelée de grenouilles ailées. — Il lui jura une fidélité éternelle, et, sur sa demande, la conduisit chez sa marraine, la fée Soussio.

妖精スーシオは、結婚を拒否する王子を7年の間、鳥に変えてしまいます。

城は明るく照らされていたけれど、王子様は到着しても最初は自分の間違いに気づきませんでした。しかし妖精スーシオが、彼の妻としてトゥルイトンヌを紹介した途端に、叫びました。
「私が、こんな化け物と結婚するだと!そんな提案をするなんて、人を馬鹿にしているのか!」 
すると妖精は報復として、向こう7年、彼を大きな青い鳥に変えてしまいました。

Bien que le château fut éclairé, le prince en arrivant ne reconnut pas d’abord son erreur, mais dès que la fée Soussio lui présenta Truitonne pour femme : — Moi, épouser ce monstre, s’écria-t-il ! vous me croyez bien sot de me faire une semblable proposition. — Mais la fée pour se venger le changea pour sept ans en un gros oiseau bleu.*3

4. フロリーヌの悲しみ

二人の姉妹と指輪

トゥルイトンヌは母親の家に戻るとすぐに、自分の失望を母親に伝えました。 母親は復讐するために、最も豪華な服で王女を着飾りフロリーヌの元に送り、「白馬の王子」からの結納品の全てを見せつけました。その中には指輪も含まれており、その輝きをフロリーヌの目に焼き付けるのでした。

Dès que Truitonne fut de retour chez sa mère elle lui raconta son dépit. — Celle-ci pour se venger la fit parer des plus riches vêtements et l’envoya auprès de Florine pour lui faire voir les présents de noce du prince Charmant jusqu’à son anneau qu’elle ne manquait pas de faire briller à ses yeux.

青い鳥がフロリーヌを慰めにやって来ます。

フロリーヌは、「白馬の王子」と結婚できるという望みをすっかり失い、深い悲しみに暮れて、昼も夜も泣き続けました。ある晩、窓辺に行くと、愛らしい青い鳥が現れ、彼女の近くをひらひらと舞いました。その鳥は、何晩も続けてやってきて、キラキラした宝石を持ってくるのでした。

Florine ayant perdu tout espoir d’épouser le prince Charmant ressentit une si grande douleur qu’elle en pleurait jour et nuit. — Un soir s’étant mise à la fenêtre elle vit paraître un charmant oiseau bleu qui voltigeait près d’elle et qui revint plusieurs nuits de suite pour lui apporter les plus beaux bijoux.

5. 傷ついた青い鳥
L'oiseau bleu blessé

足を負傷した青い鳥は魔法使いに保護された。
L'oiseau blessé aux pattes est recueilli par un enchanteur

しかし、そのことを知った女王は、青い鳥が止まる大木に、槍の穂先を打ち込ませました。ある晩、鳥は羽ばたいてその木に降り立ったところ、足が穂先に切られてしまいます。血まみれになって木の根元に落ちた鳥は、長い間探し続けていた魔法使いに保護されました。

Mais la reine informée de cela fit garnir de pointes acérées*4 un grand arbre sur lequel se perchait l’oiseau bleu — Celui-ci vint un soir à tire d’ailes s’abattre sur son arbre, mais les armes lui coupèrent les pattes. — Il tomba tout sanglant au pied de l’arbre et fut recueilli par un enchanteur qui le cherchait depuis longtemps.

バルコニーにいるフロリーヌ。 Florine à son balcon.

憐れにも、青い鳥の訪問まで奪われたフロリーヌは、慰めようもない悲しみに暮れ、愛しい鳥に会えなくなった絶望から、夜ごとに泣き続け、時折窓辺に立ち、繰り返しこう呟きました。

La pauvre Florine privée de la visite de l’oiseau bleu était inconsolable, et, désespérée de ne plus voir son cher oiseau, elle passait ses nuits à pleurer, et se mettant de temps en temps à sa fenêtre, elle répétait sans cesse :

青い鳥、時の色、
早く飛んで来て!

Oiseau bleu, couleur de temps,*5
Vole à moi promptement !

6. 魔法の終わり Fin de l'enchantement

王子は人間の姿に戻ります。
Le prince retrouve forme humaine.

しかし、フロリーヌの父は亡くなり、人々は彼女を解放し、君主として認めました。 — 王妃は殺害され、トゥルイトンヌは妖精スーシオのもとへ逃げました。 — 魔法使いは彼女の申し出を受け入れ、トゥルイトンヌを「白馬の王子」の元へ連れて行くことに同意し、結婚を条件に彼を元の姿に戻しました。

Cependant le père de Florine vint à mourir. Le peuple la délivra et la reconnut pour souveraine. — La reine mère fut assassinée et Truitonne s’enfuit chez la fée Soussio. — L’enchanteur convint avec elle de conduire Truitonne au prince Charmant, et rendit à celui-ci sa première forme à condition qu’il l’épouserait.

フロリーヌと妖精からもらった魔法の卵。
Florine et les œufs magiques offerts par la fée.

フロリーヌは変装して「白馬の王子」を探しに出かけました。行った先で小さな老婆に出会いました。老婆は突然、顔つきを変えて美しくなり、フロリーヌに言いました。「あなたが探しているものはもう鳥ではありません。きっと見つけられるでしょう。ここに卵が4つあります。困ったときに割ってみてください。きっと役に立つでしょう。」

Florine déguisée partit à la recherche du prince Charmant. — Elle rencontra une petite vieille qui tout-à-coup changea de visage, parut belle et lui dit : celui que vous cherchez n’est plus oiseau. Vous viendrez à bout de le trouver. Voilà quatre œufs : vous les casserez lorsque vous serez embarrassée ; ils seront pour vous d’un utile secours.

7. ミー・スイヨンMie-Souillon

フロリーヌが宮殿に到着。Florine se présente au palais.

八日八晩歩いてようやく、フロリーヌは「白馬の王子」の宮殿に到着しました。衛兵たちに百度も追い払われてから、やっと中に入ることができました。すぐに王子とトゥルイトンヌを認めると、ミー・スイヨンという名前で自己紹介し、驚きと宝石を売りに来たのだと伝えました。

Après avoir marché huit jours et huit nuits Florine arriva au palais du prince Charmant. Elle n’y entra qu’après avoir essuyé cent rebuffades des gardes. Elle reconnut aussitôt le prince et Truitonne, et s’étant présentée sous le nom de Mie-Souillon, elle leur dit qu’elle venait leur vendre des surprises et des bijoux.

フロリーヌは女王に魔法の贈り物を捧げます。Florine offre un cadeau magique à la reine.

翌日、フロリーヌは卵から小さな車を取り出し、王子の寝室の隣にあるエコールームに泊めてくれるという条件で、それをトゥルイトンヌに差し上げました。また別の日には、同じ条件でパイを献上しました。トゥルイトンヌが食べようとした途端、鳥たちが飛び出してきて歌い始めました。

Le lendemain Florine fit sortir d’un œuf une petite voiture qu’elle donna à Truitonne à condition qu’elle la laisserait coucher dans le cabinet des échos, voisin de la chambre du prince. — Un autre jour elle lui donna un pâté, à la même condition. — Dès que Truitonne voulut le manger il en sortit des oiseaux qui se mirent à chanter.

8. 結。Les retrouvailles

「こだまの間」での再会。

Les retrouvailles dans le cabinet des échos.

夜の帳が下りると、フロリーヌは「こだまの間」へと案内されました。皆が寝静まった頃、彼女は「白馬の王子様」を見つけられなかったことを嘆き始めました。眠っていなかった王子はそれを耳にすると、不意に部屋へ入ってきて彼女の足元に身を投げ出し、涙を流しながら彼女の手に幾度となく口づけ、ほとんど喜びのあまり死んでしまいそうな勢いでした。

À la nuit Florine se fit conduire dans le cabinet des échos. — Lorsqu’on fut endormi, elle commença ses plaintes de ne pas retrouver le prince Charmant. — Celui-ci qui ne dormait pas, l’ayant entendue, entra tout d’un coup et se jetant à ses pieds, couvrit ses mains de baisers et de larmes et faillit mourir de joie.

トゥルイトンヌは雌豚に変身。
Truitonne métamorphosée en truie.

ちょうどその時、卵を授けた魔法使いと妖精が現れました。妖精スーシオがもはや二人を害することはできないと告げ、王子とフロリーヌの結婚式を直ちに行うと宣言しました。トゥルイトンヌが異議を唱えようとすると、妖精は彼女を雌豚の姿に変えてしまい、彼女は鼻を鳴らしながら、裏庭へと逃げ去っていくのでした。

Au même moment parurent l’enchanteur et la fée qui avait donné les œufs. — Ils déclarèrent que la fée Soussio ne pouvait plus rien contr’eux et que le mariage du prince et de Florine allait se faire sur le champs. — Truitonne voulut s’y opposer, mais la fée la changea en truie et elle s’enfuit en grognant dens la basse-cour.

 

LES CONTES DES FÉES.

PELLERIN & CIE. à ÉPINAL.

*1:その名は「鱒」(フランス語でtruite)に由来。また、雌豚は「truie」と発音され、彼女の変身に合わせて語呂合わせが発生。

*2:オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』に於ても主人公が「プリンス・チャーミング」と呼ばれるが、それ自体が御伽噺に於ける典型であるja.wikipedia.org

*3:描かれた「青い鳥」は、孔雀と尾長鶏を合わせたキメラのような姿をしており、実在しないもののようである

*4:字面は「鋭い先端」でしかないが、どう見ても刃物

*5:L'heure bleue(青の刻)と呼ばれる現象を引き合いにしている。日の出前か日没後、空が日中より濃い青色になる時間帯をいう。fr.wikipedia.org

【対訳】マシュー・グレゴリー・ルイス『世にも不思議な物語詩集』23. 野生の猟人。

世にも不思議な物語詩集
Tales of Wonder !

第1巻

Mathewマシュー Gregoryグレゴリー Lewisルイス
萩原 學(訳

ワイルド・ハント Wild Hunt は、狩りの幻を見るヨーロッパ古伝。伝説の猟師の一団が狩猟道具を携え、馬や猟犬を連れ、大空に大地に百鬼夜行を繰り広げるという。

dic.pixiv.net

ja.wikipedia.org

グリム兄弟『ドイツ伝説集』では、さまよえる狩人・荒ぶる軍勢の伝説群308 - 313、中でも313『忠実なエックハルト』がこれに近い。

兄JACOB GEIMMヤーコプ・グリムは、これとは別に『ドイツ神話学TEUTONIC MYTHOLOGY. 』に於て、ウォータン(オーディン)神話として触れている。

archive.org

kusanomido.com

北米で歌になった幽霊騎手 Ghost Riders も、この類であろう。

ja.wikipedia.org


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作者ビュルガーは、吸血鬼譚の走り『レノーレ』でのみ有名な、ドイツの作家。

attendre-et-esperer.hatenablog.jp

note.com

en.wikipedia.org

なお、英訳者ウォルター・スコットは1796年、匿名にてこの訳詩を The Chase として発行しており、後にセザール・フランクが作曲した。

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23. 野生の猟人。
No.XXIII.
THE WILD HUNTSMEN.

ビュルガーGottfried August Bürger
ドイツ語からウォルター・スコット英訳
GERMAN. ——WALTER SCOTT.


原註:「野生の猟人」*1(Die Wilde Jäger)の伝承は、ドイツ農民に広く信じられている民間信仰である。この架空の狩人たちについて詳しく知りたい人は、ドイツの説話集『死霊術師』(Der Geister-banner)第1巻を読み通せば、その好奇心を満たされるであろう。このバラッドの原作は、かの『レノーレ』で知られる作家ビュルガーの手になる。

The tradition of the "Wild Huntsmen" ( Die Wilde Jäger ) is a popular superstition, very generally believed by the peasants of Germany. Whoever wishes for more information respecting these imaginary Sportsmen, will find his curiosity fully satisfied, by perusing the first Volume of the German Romance of “the Necromancer;”(Der Geister-banner.) The original of this Ballad is by Bürger, Author of the well-known “Leonora.”

訳注:The Necromancer; or, The Tale of the Black Forest.
en.wikipedia.orgこの英訳版は、Google books及びWikisourceにて公開中。play.google.com Volume 1

en.wikisource.org

play.google.com Volume 2更に、これを邦訳したものもあったが、完売とのことkimyo.blog50.fc2.comklio.icurus.jp


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librivox.org


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森林伯が進軍ラッパ吹き鳴らし。
 乗馬だ、乗馬! ハルー、ハルー!
気性激しい馬が朝の空気を嗅ぎ、
 群れなす農奴、主君を追う。

The Wildgrave[1] winds his bugle horn*2;
  To horse, to horse! halloo, halloo!
His fiery courser snuffs the morn,
  And thronging serfs their Lord pursue.

解き放たれたつがいから成る、熱狂的な一団が、
 藪や茨、茂みを駆け抜ける、
猟犬、角笛、駿馬、対して殷々応えるは、
 山からこだま、寝た子も起こす。

The eager pack, from couples freed,
  Dash through the bush, the brier, the brake;
While answering hound, and horn, and steed,
  The mountain echoes startling wake.


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神ならではのいとも神聖なる日の光
 あそこの尖塔までも金色に染め上げる、
罪深い人をも祈りに招くかのように、
 大きく、長く、深く、繰り返し鐘は鳴る。

The beams of God's own hallow'd day
  Had painted yonder spire with gold,
And, called sinful man to pray,
  Loud, long, and deep the bell had toll'd.

なおも、森林伯は進み続け。
 やあ、やあやあ!聞け、我こそは!
すると、反対側から馬を駆り立て、
 見知らぬ騎手が二人、一行に加わった。

But still the Wildgrave onward rides;
  Halloo, halloo! and, hark again!
When, spurring from opposing sides,
  Two stranger horsemen join the train.


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見知らぬ左右は、推測はつく、
 口には出せぬ、誰だろう。
右手の駿馬は銀白色、
 左手は、地獄の焼色。

Who was each stranger, left and right,
  Well may I guess, but dare not tell:
The right-hand steed was silver white,
  The left, the swarthy hue of hell.


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若く色白、右手の騎手は、
 その微笑み、五月の朝のよう。
左、茶色い瞳の放てるは、
 不気味な光線、真夜中のいなづまのよう。

The right-hand Horseman, young and fair,
  His smile was like the morn of May;
The left, from eye of tawny*3 glare,
  Shot midnight lightning's lurid ray.

高々と狩りの帽子を振りかざし雄叫び、
  「ようこそ、ようこそ、貴き殿下!
 この地に、海に、空に、王侯貴族の狩りに、
  匹敵し得る、どんな楽しみが有ろうか?」―

He waved his huntsman's cap on high,
  Cried, “Welcome, welcome, noble Lord!
“What sport can earth, or sea, or sky,
  “To match the princely chase, afford?”―


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―「弔鐘と変わりゆく、やかましいラッパは止めて、」―
 との雄叫び、耳当たり好い美丈夫の声。
―「されば強弱うち揺らぐ合唱の敬虔もて、
  その粗野で不浄な騒音に代えたまえ。」

―“Cease thy loud bugle's changing knell,”―
  Cried the fair youth, with silver voice;
―“And for devotion's choral swell,
  “Exchange the rude unhallow'd noise.

「今日は、不吉な狩りは控えるがよい、
  かしこの鐘、今なお聖堂へと呼びかけつつある。
 今日は、諫める精霊の声聞くがよい、
  さもなくば明日、汝は徒労に嘆くこととなろう。」—

“To-day, the ill-omen'd chase forbear,
  “Yon bell yet summons to the fane;
“To-day the warning spirit hear,
  “To-morrow thou mayst mourn in vain.”—


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―「ね、さっさと道を空けよ!」
 クロテン狩りの返すしゃがれ声。
「ブツブツいうのは修道士共に任せよ、
  朝課の歌から、鐘や書物、神秘まで。」―

―“Away, and sweep the glades5 along!”―
  The sable hunter hoarse replies;
―“To muttering monks leave matin-song
  “And bells, and books, and mysteries.”―

森林伯は、気性激しい駿馬に拍車をかけて、
 ひと跳びで前へ飛び出すや、
―「誰が、眠たい司祭もどきの説教なんかで、
  陽気な角笛と猟犬を捨てるというのか?」

The Wildgrave spurr'd his ardent steed,
  And, launching forward with a bound,
―“Who, for thy drowsy priestlike rede,
  “Would leave the jovial horn and hound?

「それゆえ、もし我らの男らしい遊びが不快なら。
  敬虔なる阿呆共ともども詠唱、祈るがいい。
 眉も黒々たる友よ、まったく仰せの通りだから。
 『そうら、そうら!行ったぞ、あっちに!』」―

“Hence, if our manly sport offend:
  “With pious fools go chant and pray;
“Well hast thou spoke, my dark-brow'd friend,―
  “Halloo, halloo! and, hark away!”―


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森林伯は拍車かけ、愛馬は進む軽快に、
 苔むした湿原を、荒野を、森を、丘を越え。
そしてその左側に、加えてその右側に、
 見慣れぬ騎手たち、依然としてついてきて。

The Wildgrave spurr'd his courser light,
  O'er moss and moor, o'er holt and hill;
And on the left and on the right,
  Each stranger horseman follow'd still.


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あそこの絡み合った茨の中から、
 飛び出す雄鹿の白いこと、雪よりも。
角笛が鳴る、大きく、ことさら。
―「行ったぞ前、前! オラ、オー!」―

Up springs, from yonder tangled thorn,
  A stag more white than mountain snow;
A louder rung the Wildgrave's horn,
  ―“Hark forward, forward! holla, ho!”―


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不用心な野郎が道を横切ってしまって、……
 下から響くいかづちのようなひづめの音に息を呑む。
だが、生きる者は生き、死ぬ者は死ね、
 なおも、前へ、前へ!進み続ける。

A heedless wretch has cross'd the way,―
  He gasps the thundering hoofs below;
But, live who can, or die who may,
  Still, Forward, forward! On they go.

見よあの畑、秋の恵みに満ちる、
 あの簡素な柵が交わる先の。
見よ、森林伯の足元にひれ伏す、
 苦労に日焼けした農夫の姿を。

See where yon simple fences meet,
  A field with Autumn's blessings crown'd;
See, prostrate at the Wildgrave's feet,
  A husbandman with toil embrown'd.

―「どうか、お慈悲! お慈悲を! 高貴なる御方よ。
 この貧者の僅かなかてを、どうかご容赦を」と叫び、
「この額から流した汗で稼いだものを、
  焼けつくような、猛暑の七月の間に。」―

―“O mercy! mercy! noble Lord;
  “Spare the poor's pittance,” was his cry,
“Earn'd by the sweat these brows have pour'd,
  “In scorching, hour of fierce July.”―

真摯なる右手の余所者は懇願する、
 左手の者、なおも狩り物に歓声。
性急なる伯爵はちっとも耳貸さず、
 猛り狂い、ただひたすら突き進み。

Earnest the right-hand Stranger pleads,
  The left still cheering to the prey;
The impetuous Earl no warning heeds,
  But furious holds the onward way.


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―「失せろ、犬ころ!生まれ卑しい、
  さもなくば恐れよ、こだまする鞭の一撃を!」―
即ち高々、進軍ラッパが鳴り渡り、
 —「さあ前進、前進だ、ホーラ、ホー!」―

―“Away, thou hound! so basely born,
  “Or dread the scourge's echoing blow!”―
Then loudly rung his bugle-horn,
  —“Hark forward, forward, holla, ho!”―

かく言うが早いか……一跳びに
 貧しい農夫の粗末な柵を乗り越える。
陰鬱な12月の疾風のように、
 荒々しく人・馬・猟犬が追いかける。

So said, so done——A single bound
  Clears the poor labourer's humble pale:
Wild follows man, and horse, and hound,
  Like dark December's stormy gale.


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そして人と馬と猟犬と角笛が、
 耕作地を駆け抜け、破壊の限りを尽くす。
穀物の踏みつけを愉しんでいる以上、
 凶悪な飢饉が、狂乱の群衆を見おろしている。

And man, and horse, and hound, and horn,
  Destructive sweep the field along,
While joying o'er the wasted corn,
  Fell Famine marks the madd'ning throng.


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再び目覚めた、臆病な獲物
 湿原や荒野を、森や丘を駆け巡る。
激走、感ずるは力尽きると、
 生き延びようと、簡単な技に頼る。

Again up roused, the timorous prey
  Scours moss and moor, and holt and hill;
Hard run, he feels his strength decay,
  And trusts for life his simple skill.

孤立は危険に過ぎると見えた、
 群衆の庇護を求めよう。
身を置く群れの飼い慣らされた、
 無害な首と紛らわせよう。

Too dangerous solitude appear'd;
  He seeks the shelter of the crowd;
Amid the flock's domestic herd
  His harmless head he hopes to shroud.

湿原や荒野を、森や丘を越え、
 足跡を執拗な猟犬が追跡する。
疲れも知らず、湿原や荒野を越え、
 猛り狂う伯爵は追い続ける。

O'er moss and moor, and holt and hill,
  His track the steady blood-hounds trace;
O'er moss and moor, unwearied still,
  The furious Earl pursues the chase.

羊飼いは深く伏して懇願。
  ―「おお、高貴なる男爵よ、どうかお慈悲を、
  「この羊たち、未亡人の僅かな財産、
  「この群れを、孤児の大切な羊たちを。」―

Full lowly did the herdsman fall;
  —“O spare, thou noble Baron, spare
“These herds, a widow's little all;
  “These flocks, an orphan's fleecy care.”―

右手の余所者は熱心に嘆願し、
 左手は獲物獲物と囃し立て。
伯爵は祈りも同情も聞き入れない、
 猛り狂って、前進し続けて。

Earnest the right-hand stranger pleads,
  The left still cheering to the prey;
The Earl nor prayer nor pity heeds,
  But furious keeps the onward way.

「不調法な犬め! 我が愉しみを妨げるとは。
  そんな御託やベソかき面など無駄なこと、
 たとえお前のような人間の魂が、
  この雌牛の腐肉に宿っていようとも!」

—“Unmanner'd dog! To stop my sport
  “Vain were thy cant and beggar whine,
“Though human spirits, of thy sort,
  “Were tenants of these carrion kine!”―


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再びラッパを吹き鳴らし、 
 —「さあ前進、前進だ、ホーラ、ホー!」―
群れへ向かい、無慈悲に嘲り、
 けしかけるは、猛り狂う猟犬たちを。

Again he winds his bugle-horn,
  —“Hark forward, forward, holla, ho!”―
And through the herd, in ruthless scorn,
  He cheers his furious hounds to go.

絞められた贄が山ほど倒れて、 
 傷ついた羊飼いもその近くに伏し。 
殺戮の叫びに雄鹿は愕然として、
 再び駆け出す、恐怖のあまりに。

In heaps the throttled victims fall;
  Down sinks their mangled herdsman near;
The murderous cries the stag appal,
  Again he starts, new-nerved by fear.

血でべたべた、泡で白くなった、
 苦悶の涙大いに溢れ出る間も、
探し求める、薄暗い森の中、
 謙虚な隠者の神聖な隠れ家を。

With blood besmear'd, and white with foam*4,
  While big the tears of anguish pour,
He seeks, amid the forest's gloom,
  The humble hermit's hallow'd bour.


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しかし人と馬と、角笛と猟犬と、
 足跡を追ってぐいぐいバタバタ走っていく。
聖なる礼拝堂に「行ったぞ!」と、
 「ホウラ、ホー!」と掛け声が響く。

But man and horse, and horn and hound,
  Fast rattling on his traces go;
The sacred chapel rung around
  With, Hark away, and holla, ho!


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穏やかに、不敬な騒動のさなか、
 聖なる隠者は祈りを捧げ。
—「慎め、神の家を血で汚すか。
  「神の祭壇を敬え、慎め!」

All mild, amid the rout profane,
  The holy hermit pour'd his prayer:
—“Forbear with blood God's house to stain;
  “Revere his altar, and forbear!

「いかに卑しき獣とて、訴えの権利あろう。
  残虐や傲慢をもて損なわれたならば、
 冷酷な者の頭に復讐を落とすであろう―
  今こそ戒めを知れ、脇に控えるのだ。」―

“The meanest brute has rights to plead,
  “Which, wrong'd by cruelty, or pride,
“Draw vengeance on the ruthless head;—
  “Be warn'd at length, and turn aside.”―


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依然として、色白の騎手は不安げに嘆願。
 黒い騎手は雄叫びしつつ、獲物を指し示す。
ああ!物狂おしくも続ける前進、
 伯爵は警告に耳貸さず。

Still the fair horseman anxious pleads;
  The Black, wild whooping, points the prey:
Alas! the Earl no warning heeds,
  But frantic keeps the forward way.

—「神聖だろうとなかろうと、正しかろうと間違おうと、
  お前の祭壇や儀式など知りはせん。
 聖なる殉教者たちの聖歌でも、
  神ご自身でも、翻身など有り得ん。」―

—“Holy or not, or right or wrong,
  “Thy altar and its rites I spurn;
“Not sainted martyrs' sacred song,
  “Not God himself, shall make me turn.”―


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馬に拍車かけ、角笛を吹く。
 ―「さあ前進、前進だ、ホウラ、ホー!」―
だが旋風の翼に去っていく、
 雄鹿も、小屋も、隠者も何もかも。

He spurs his horse, he winds his horn,
  —“Hark forward, forward, holla, ho!”―
But off, on whirlwind's pinions borne,
  The stag, the hut, the hermit, go.

馬も人も、角笛も猟犬も、
 狩りの喧騒すら消え去った。
蹄の音も遠吠えも、ラッパの音も消え、
 辺りはしんと、死の静寂のみ。

And horse and man, and horn and hound,
  And clamour of the chase, was gone:
For hoofs and howls, and bugle sound,
  A deadly silence reign'd alone.

怯えた伯爵、目を見はり見回すと。……
 角笛を鳴らそうとして虚しく、
人を呼ぼうとして虚しく。一音すらも
 引きつる唇からは出すことならず。

Wild gazed the affrighted Earl around;—
  He strove in vain to wake his horn,
In vain to call; for not a sound
  Could from his anxious lips be borne.

忠実な猟犬に耳を澄ますも、
 遠吠え一つも聞くことなし。
愛馬は地面に根を生やしたよう、
 急かす拍車も気づかないふり。

He listens for his trusty hounds;
  No distant baying reach'd his ears;
His courser, rooted to the ground,
  The quickening spur unmindful bears.

垂れ込める影、暗くも暗く、
 暗くなること墓の暗闇。
静寂を破る音とて何ひとつなく、
 ただ急流遠く響くのみ。

Still dark and darker frown*5 the shades,
  Dark as the darkness of the grave;
And not a sound the still invades,
  Save what a distant torrent gave.


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うなだれた罪人の頭上高らか、
 遂に厳粛な静寂が破られ、
ずっしりと赤い暗い雲から
 雷鳴の語る恐るべき声。

High o'er the sinner's humbled head
  At length the solemn silence broke;
And, from a cloud of swarthy red,
  The awful voice of thunder spoke.

「美しき被造物を虐げる者よ!
  背教の霊が焼き入れした工具よ! 
 神を嘲る者よ!貧しき者の鞭よ!
  汝が杯、計るに満杯ぞ。 

—“Oppressor of creation fair!
  “Apostate spirit's harden'd tool!
“Scorner of God! scourge of the poor!
  “The measure of thy cup is full.

「永遠に森の中を追い回されるがいい。
  永遠に怯えた荒野をさまよえよ。
 汝が運命さだめおしえとなろう、傲慢な者に
  最も卑しい被造物でさえも神の子よ。」

“Be chased for ever through the wood;
  “For ever roam the affrighted wild;
“And let thy fate instruct the proud,
  “God's meanest creature is his child.”―


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しんとして。閃光一筋、陰鬱にも
 茶色い森を黄色く染め上げ。
森林伯の逆立つ髪もぼうぼうと、
 神経も骨も恐怖に凍らせ。

'Twas hush'd: One flash, of sombre glare
  With yellow tinged the forests brown;
Up rose the Wildgrave's bristling hair*6,
  And horror chill'd each nerve and bone.

冷たい汗が、凍てつく小川と流れ落ち。
 起こった風が歌い始めて。
だんだん強く、強く、強くなり、
 嵐と暴風運び来る、翼に乗せて。

Cold pour'd the sweat in freezing rill;
  A rising wind began to sing;
And louder, louder, louder still,
  Brought storm and tempest on its wing.

大地は聞き届け……断腸の思い。
 口を開けた裂け目から、数多の叫びを伴って、
硫黄くさい炎と混じり合い
 かの忌まわしい、地獄の犬共が昇って。

Earth heard the call—her entrails rend;
  From yawning rifts, with many a yell,
Mix'd with sulphureous flames, ascend
  The misbegotten dogs of hell.

次に現れた恐ろしい狩人は誰だったのか、
 あえて言うまい、見当はつくけれど。 
その目光るは真夜中のいなづまさながら、
 その馬は浅黒い地獄の色。 

What ghastly Huntsman next arose,
  Well may I guess, but dare not tell:
His eye like midnight lightning glows,
  His steed the swarthy hue of hell.

森林伯は茂みや茨を飛び越える、
 遣る瀬無い悲鳴を上げながら。
猟犬と馬と角笛とが後ろに続く、
 そっちに行ったぞ、そうら、そら!

The Wildgrave flies o'er bush and thorn,
  With many a shriek of helpless woe;
Behind him hound, and horse, and horn,
  And, Hark away, and holla, ho!

絶望の眼差しで、
 近く、すぐ後ろに、 勢子を意識する、
血まみれの牙と熱烈な叫びにて。 
 猛り狂う恐怖に遭って逃げ惑う。

With wild despair's reverted eye,
  Close, close behind, he marks the throng;
With bloody fangs and eager cry;
  In frantic fear he scours along.

なおも依然、恐ろしい追跡は終わらない、
 時間そのものが終わるまで。
昼間は、大地の洞窟空間を駆け回り、
 真夜中の魔の刻に、昇天。

Still, still shall last the dreadful chase,
  Till time itself shall have an end;
By day, they scour earth's cavern'd space,
  At midnight's witching hour, ascend.

これぞかの角笛、猟犬、そして馬、
 夜更かしの農夫が時に耳にする。
恐れ慄く耳に、野蛮な騒音が入るから
 思わず十字架に縋ってしまう。

This is the horn, and hound, and horse,
  That oft the lated peasant hears:
Appall'd, he signs the frequent cross,
  When the wild din invades his ears.


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眠らない司祭は時に涙を 流す
 人間の傲慢に、人間の悲しみに、 
真夜中のミサの時に聞こえる、 
 「ホラ、ホー!」という地獄の叫び声に。

The wakeful priest oft drops a tear
  For human pride, for human woe,
When, at his midnight mass, he hears
  The infernal cry of Holla, ho!


原註

[1] The Wildgrave

「ヴィルトグラーフェ」はドイツの称号であり、王立森林の守護伯に相当する。

The Wildgrave is a German title, corresponding to the Earl Warden of a royal forest.

en.wikipedia.org
訳注: 英語Wildgrave=独語Waldgraf。音写すると長くなるので、Wald(森林)+graf(伯爵位)と考え、ここでは「森林伯」と訳す ja.wikipedia.org

訳注

*1:訳語は「荒ぶる狩り」「荒々しい狩猟」「オーディンの渡り」など定まらない。「野良狩人」でも良いかと考えたが、オンラインゲームにて別の意味になるらしいので破棄

*2:ビューグルは、音も見た目も喇叭そのもの。bugle hornの名の通り、元は雄牛の角で作った角笛。金管楽器としては、ナチュラルトランペットに似た構造で、長さはその半分しかない ja.wikipedia.org

*3:黄褐色#CD5700。文字色に使ってみる

*4:口から泡を吹くほどにも、あるいは汗が泡と化すほどにも走った、の意

*5:フランス語 frognier「顔にシワを寄せる」(< frog) に由来し、専ら「眉をひそめる」「顔をしかめる」意。ここでは「闇」の形状を表す、というより形あるものとして「闇」を形容するので、「しわ寄せる」「巻き込む」表現を考えた

*6:ここは「逆立つ髪の毛」で良いと思うのだが、その前の Up rose も「逆立つ」とすると重複でしかないため。少し書き換え