
夜 Nyx は何処から来たのか
kimihikohiraoka.hatenablog.com
挿絵は塗り絵アプリColor Planet から。ボードレール『理想』を論じる平岡公彦氏のブログを再読していて、何か引っかかる気がして。
Tannhäuser by Richard Wagner 1967(LI)
www.youtube.com Conductor: Wolfgang Sawallisch
Orchestra & Chorus: Teatro alla Scala
Tannhäuser: Hans Beirer
Elisabeth: Sena Jurinac
Wolfram von Eschenbach: Victor Braun
Venus: Janis Martin
珍しくも美神ウェヌスが出てくるオペラ、ワーグナー『タンホイザー』を聞きつつ、リリスやヘカテーと吸血鬼を併せ論じたノセール氏のブログとニコニコ動画を(久々に)視聴。
ここで、リリスの像として紹介された、バーニーの浮彫あるいは夜の女王と呼ばれるものは、おそらく読者諸君にも見覚えがあろう。しかし、その表す姿が誰のものであるかは、未だ明らかではない。
バーニーの浮彫あるいは夜の女王

この高浮彫は紀元前1800〜1750年、メソポタミアのイシン・ラルサ時代または古バビロニア時代に制作されたと推定されるテラコッタ板で、全裸にして翼と鳥の足を持つ女神らしき人物を描き、その左右にフクロウを配し、足下に獅子2頭を踏む。
この女神が何者であるかについては、地母神イシュタル/イナンナ*1とも、冥府の女王エレシュキガルとも、はたまた夜の女王ともリリスとも言われており、古代メソポタミアに於ける神霊の一柱に違いないという以上のことは正直よくわからない。
ヘカテーの系図
まとめられた系図は複数の説を貼り合わせたもので、同時に存在はしなかった関係も含まれているようだが。後述する通り、リリスはウルガタ訳聖書に於てラミアと翻訳され、また文献によっては、そのラミアは、エンプーサの別名ともされた。エンプーサは変身能力を持つ妖怪♀で、アリストパネース『蛙』やピラストラトス『テュアナのアポローニオス伝』に出てくる。女神ヘカテーに使役される者とも、ヘカテーの娘たちとも言われる。もっとも、子供の悪戯を戒める為に「悪い子には○○が来るぞ」的な悪役にされていた存在でもあり、誇張して伝えられた可能性もある。
John William Waterhouse (1849–1917) Lamia(1909)
エンプーサはヘカテー
エンプーサについては、使える画像が見つからない。変身能力ゆえ正体不明ということだろうか?ただ、昆虫の、というかカマキリの Empusa fasciata という種類があって、華やかな擬態を見せる。Empusa の名も「雌蟷螂」の意味らしいから、あるいはこれが素かもしれない。
May 3, 2011, Gideon Pisanty: Empusa fasciata, female, Mount Carmel, Israel.
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アリストパネースに拠れば、エンプーサはヘカテーと同一神。このことは、WILLIAM G. RUTHERFORD がラヴェンナ写本から編訳した『アリストパネース注釈集』SCHOLIA ARISTOPHANICA(1896) 所収 RANAE 第293行への注に記す。
……『タゲニスタエ』に於けるアリストパネースの描写に従えば、エンプーサはヘカテーと同一。
A. 「汝、地獄のヘカテーよ、蛇の体くねらせ給う。」
B. 「なぜエンプーサを呼び出す?」
. . . Empusa is identical with Hecate, as Aristophanes in the Tagenistae.
A. "And thou, O Hecate of Hell, wriggling thy coils of snakes."
B. "Why summon Empusa?"
判り難いかな?Aがヘカテー召喚の呪文を唱えたのに、Bは「何でまたエンプーサとか」と非難している。これは、ヘカテー=エンプーサという図式が、少なくともアリストパネース作品の聴衆には、共通する前提だったことになる。
ヘカテーはギリシャ神話で重きをなす月の女神。雷神ゼウスが生まれたとき、父神クロノスに食われないよう逃がしてやった恩人でもある。アルテミス、セレーネーと混淆し、3柱で月の三態を示すものともされた。この「三形態のヘカテー」(ヘカテー・トリモルポス)は、一部の名を変えてローマ神話にも引き継がれた。
- ヘカテー=新月:「死」「再生」
- セレーネー(ルーナ)=満月:「成熟」
- アルテミス(ディアーナ)=三日月:「誕生」

マイケル・ドレイトン『月に居る人 The Man in the Moone』
この事が書いてあるというので、探してきた。シェイクスピア『真夏の夜の夢』に、月の中の人が出てくるのも、この題の捩りだろうか。Hecate が H ECATE、Neptune が N EPTUNE と綴られていたりと、文字起こしの問題がある上に、かなり長くなるので、訳出は別途にする。
先の系図にない親子関係の説もある。目下翻訳中の『死霊術師』関連を調べていて見つけた事で、シチリアのディオドーロスに拠ればヘカテーが、魔女キルケーやメーデイアの母であるという。魔術の神でもあるヘカテーに、メーデイアは施術に当たり力添えを願っているし、キルケーもその薫陶を得ており、親族関係があっても不思議ではない。
ホメロス『オデュッセイアー』第10巻に於て女神キルケー*2に死霊術を教わったオデュッセウスは、第11巻で「オーケアノスの涯」へ渡り冥府に入り、数多の亡霊共々、予言者ティレシアスを召喚し行末を占っている。オデュッセウスの行状からは、「魔女」の概念はなかったこと、魔術は神の力の行使であったこと、死霊術も魔術の一分野であったことなどが窺える。残念なことに、ホメロスはヘカテーにもリリスにも一切言及していない。但し明らかに「三叉路のヘカテー」を意識したと思われる描写もある。
「…冥王の昏く湿っぽい館へとおいでなさい。そこにはアケオロスの沼へと燃える火の河や号泣の河が流れ込んでいて、この河はまったく憎悪の河の分流ですが、岩のところで二つの河がひどい轟きを立てながら合流しております。それからつぎにその場所へ、…穴を掘るのです、そしてそのまわりに、あらゆる亡者のための供養の灌奠をそそぎかけるのです。…」(呉茂一訳)
蛇足開始
より混乱を増すべく、筆者からも追加しよう。リリスの姿とも見られる「バーニーの浮彫」が、フクロウを従えた「夜の女王」というのなら、この姿はローマ神話の夜、ギリシャ神話のアテーナーなどの源ではあるまいか?なお、この種のフクロウは一般に screech owl と呼ばれ、女の悲鳴のような鳴き方をする。欽定訳聖書ではリリスをこの名に英訳しているようだが、実物は可愛らしいものだ。
ギリシャ神話の「夜」Nýx

ギリシャ神話の「夜」は、ヘーシオドス『神統記』に拠れば原初の神カオスの娘であり、エレボス(幽冥)の妹にして妻。2人してヘーメラー(昼)、アイテール(上天の清気)、カローン(地獄の渡し守)の両親。
Généalogie à une génération de Chaos Juliensechaud75
CC BY-SA 4.0
他にヒュプノス(熟睡)とタナトス(死)の双子、オネイロス(夢)、モイライ(運命の三女神)、ヘカテー(月)などの母。オルフェウス教では、ウーラノス(天空)、ガイア(大地)の母。
モーツァルト『魔笛』から夜の女王
はたまた、「夜の女王」というなら「夜の女王のアリア」だろう。
夜の女王に対立するザラストロは、ペルシャの国教であった拝火教の開祖ゾロアスター(ニーチェの著作ではツァラトゥストラ、紀元前7世紀頃)の事だから、新アッシリア王アッシュールバニパルと同時代だった可能性がある。
ラファエロ『アテナイの学堂』右端。天球を手にする髭面がザラスシュトラ
ご存知アッシュールバニパル王。こんな時でも腰帯にペンを挟み、書記であることを主張
多神教に反発しての新興宗教開祖だから、アッシリアを含むメソポタミアに対しても、ツァラトゥストラは攻撃的だった事だろう。
では、ゾロアスターと対立した夜の女王とは、何者だったか。それがリリスではなかったか。
…シャマシュ?
もう一つ。バーニーの浮彫に於ける女神の被り物にご注目。


螺旋模様の帽子。何処かで見た気がして、並べてみたのはハンムラヒの法典石柱頭部の浮き彫り。ヘルメットのようにツルンとした帽子を被って立つハンムラヒ王に、計量具である物差しと巻き尺を与える神の姿は、正義を司る太陽神と言われる。シャマシュの帽子を被るからである。筆者は、バビロンの都市神マルドゥクのコスプレまたはシャマシュの権能を奪った姿と考える。シャマシュの特徴は、帽子にしか見られないからである。その同じ帽子を、バーニーの浮彫に見る女神が被るのだとしたら?この「夜」は、太陽神=正義を受け継いだ存在ということにならないか。それとも「夜」が「昼」に取って代わるということだろうか?だとしたら、「夜」から「昼」に代わる「朝」の像が有っても良さそうだが。リリスまたはイナンナ/イシュタルあるいはエレシュキガルと見られるこの像が何れのものであるにせよ、フクロウを引き連れた「夜」及び「死」の象徴には違いないから、それが「正義」とは、どんな暗黒時代だったのだろう。南無阿弥陀仏。……は、未だこの時代に存在していなかったか。
王権奪取?
「バーニーの浮彫」では女王の鳥脚が獅子を踏んで立つ。このような構図は、仏教に於けるマハーカーラ像の場合、踏みつけにした神の権能を奪う(引き継ぐ)ことを意味する。
同じ発想が、この浮彫にもあるのではないか。というのは、王権を獅子に象ったと見られるアッシリアの浮彫が遺るからである。
これはメトロポリタン美術館の所蔵になる石膏像で、紀元前883–前859年頃の新アッシリア時代、アッシュールナツィルパル2世の治世に造られたと推定されている。
この翼のあるライオンは、アッシュールナツィルパル2 世の宮殿の門扉や入り口に置かれた、翼のある野獣を描いた巨大な石像のひとつであり、支配者を悪から守り、宮殿を訪れるすべての者を圧倒することを目的に造られました。ライオンは古代中近東の神像によく見られる角のついた被り物をし、脚が5本あります。
というのだが……「被り物」をよく見てみよう。上に見たのと、同じ形をしていないかな?角がついたのではなく、シャマシュの渦巻きだろう。つまり、バビロニアの正統(王権)を継ぐ者という主張であると、筆者は見ている。
では、その獅子を「夜の女王」が踏んで立つとしたら?

しかも女王は、シャマシュの帽子を被っているのだ。

目の所が穴ぼこになっているのでハニワのように見えてしまうけれど、元は眼球を象った宝石が嵌っていたらしい。加えて色鮮やかに着色されていたそうだが、正直こちらは見たくもない。
文献上のリリス
ともあれ、文献上のリリスを確認しようとしたが。
聖書にある…というより無いリリス
聖書に魔女リリスの事が書いてある……と思いきや、検索しても出てこない。邦訳版では「夜の魔女」と訳された箇所が唯一らしい。
イザヤ書34章
14 野の獣はハイエナと出会い、鬼神はその友を呼び、夜の魔女もそこに降りてきて、休み所を得る。
翻訳の問題も一因らしく、別名にされているもの複数。特にヒエロニムスのウルガタ訳以来、Lamia と訳す聖書多数。英語版 Wikipedia から比較してみると
Lilithとするイザヤ書34章14節
New American Bible
Wildcats shall meet with desert beasts, satyrs shall call to one another; There shall the Lilith repose, and find for herself a place to rest.
Masoretic Text
,וּפָגְשׁוּ צִיִּים אֶת-אִיִּים, וְשָׂעִיר עַל-רֵעֵהוּ יִקְרָא; אַךְ-שָׁם הִרְגִּיעָה לִּילִית, וּמָצְאָה לָהּ מָנוֹח
And shall-meet wildcats with jackals the goat he-calls his- fellow lilit (lilith) she-rests and she-finds rest
Lamia とするイザヤ書34章14節
Latin Bible
et occurrent daemonia onocentauris et pilosus clamabit alter ad alterum ibi cubavit lamia et invenit sibi requiem
Wycliffe's Bible (1395、イザヤ書34章15節)
Lamya schal ligge there, and foond rest there to hir silf.
The Bishops' Bible of Matthew Parker (1568)
there shall the Lamia lye and haue her lodgyng.
Douay–Rheims Bible (1582/1610)
And demons and monsters shall meet, and the hairy ones shall cry out one to another, there hath the lamia lain down, and found rest for herself.
Screech Owl とするイザヤ書34章14節
The Geneva Bible of William Whittingham (1587)
and the screech owl shall rest there, and shall finde for her selfe a quiet dwelling.
King James Version (1611)
The wild beasts of the desert shall also meet with the wild beasts of the island, and the satyr shall cry to his fellow; the screech owl also shall rest there, and find for herself a place of rest.
リリスの由来は?
語源俗解では、リリス Lilith の名が表すのは、ヘブライ語の語根 laylâ(夜)に由来する夜の悪魔とされる。学術的にはシュメール語のlíl (風)から借用されたアッカド語 lilītu(m)のヘブライ語形 lilu(m)の女性形で、元来は風や嵐に関わるメソポタミアの不妊の女悪魔であったとする説が有力。

死海文書4Q510–511
ヘブライ語またはアラム語の用語 lilith が初めて明確に使用されているのは、Dead Sea Scrolls(死海文書)4Q510–511の一部。名前だけで、その性格などは不明。
そして之なる指導者は、彼の誉れ高き壮観を、破壊の天使や私生児・悪魔・リリス・吠え猛る者その他(砂漠の住人など)の霊、そして前触れもなく人々に取り憑き、理解の精神から人々を遠ざけようとする霊たちを全て、畏怖させ、恐慌に陥れる壮観を宣言する。
And I, the Instructor, proclaim His glorious splendor so as to frighten and to te[rify] all the spirits of the destroying angels, spirits of the bastards, demons, Lilith, howlers, and [desert dweller...] and those which fall upon men without warning to lead them astray from a spirit of understanding.
リリスの物語
The Story of Lilith
最古のリリス伝承は『ベン・シラのABC Alphabet of ben Sirach、אלפא-ביתא דבן סירא〔Alpā-Bethā də-Ben Sirā〕』と呼ばれるヘブライ語聖書注解書で、700〜1000年頃にイスラム圏内で書かれた。
リリス伝承をまとめたサイトがあり、『ベン・シラのABC』が英訳されているので、読んでみる。他にPDFで公開されているものもある。
平安時代の作品だから、それっぽく擬古文及び歴史的仮名遣いにしてみた。慣れれば難しくないので、歴史的仮名遣ひを覚えていない人もこの機会にどうぞ。
ベン・シラのABC第5問
The Alphabet of ben Sira Question #5 (23a-b)
その後まもなく、王の幼き息子、病に倒る。ネブカドネザル王、宣ふに「わが息子を治せ。さもなければ、お前を殺す。」
ベン・シラ、即ち座して聖名記せるお守り奉り、医学司れる天使たちの名・姿・像・翼・手・足を描けり。ネブカドネザル王、お守り御覧じて曰く「誰そ彼や?」
Soon afterward the young son of the king took ill, Said Nebuchadnezzar, “Heal my son. If you don’t, I will kill you.” Ben Sira immediately sat down and wrote an amulet with the Holy Name, and he inscribed on it the angels in charge of medicine by their names, forms and images, and by their wings, hands, and feet. Nebuchadnezzar looked at the amulet. “Who are these?”
「医療を司る天使、スンヴィ・スンスヴィ・スムングロフに候。
神は、アダム一人を創り給ひし後、『人が独りでいるのは良くない』と仰せられ*3。アダム創り給ひしに同じく、女性を土から創りアダムに給ひ、リリスと名付け給ふ。
アダムとリリス、諍ひ始め。女は『吾は下には寝ず』と申し、男は『吾は汝が下には寝ず、上になるのみ。汝は下になるがふさわしく、吾こそ上になるべきなり』とぞ申す。リリス応へて『共に土から造られし身、何ら等しからざるはなし』
二人互いに耳貸さず。はや埒あかぬとリリス見て、不可言の名*4:を唱ふるや、空へ飛び去れり。
アダムは創造主が前に跪き祈り。『万物の主よ!賜りし女、逃げおほせり。』即ち聖なる御方(祝福あれ)、之に連れ戻すべく、天使三人つかはし給ふ。」
“The angels who are in charge of medicine: Snvi, Snsvi, and Smnglof*5. After God created Adam, who was alone, He said, ‘It is not good for man to be alone‘ (Gen. 2:18). He then created a woman for Adam, from the earth, as He had created Adam himself, and called her Lilith. Adam and Lilith began to fight. She said, ‘I will not lie below,’ and he said, ‘I will not lie beneath you, but only on top. For you are fit only to be in the bottom position, while am to be in the superior one.’ Lilith responded, ‘We are equal to each other inasmuch as we were both created from the earth.’ But they would not listen to one another. When Lilith saw this, she pronounced the Ineffable Name and flew away into the air. Adam stood in prayer before his Creator: ‘Sovereign of the universe!’ he said, ‘the woman you gave me has run away.’ At once, the Holy One, blessed be He, sent these three angels to bring her back.
「聖なる御方、アダムに宣はく。
『もし彼女、戻らむと諾はば、それでよし。諾はざれば、日に百人の子供、死に至るべし。』
御使たち、神の御許を離れ、リリス追ふ。エジプト人の溺れ死ぬべし大いなる水、大海原に追い詰め給ふ。
御使たち神の言を伝えしかども、彼女は戻るを諾はず。御使たち宣はく『汝を海に沈めむ』と。」
“Said the Holy One to Adam, ‘If she agrees to come back, fine. If not she must permit one hundred of her children to die every day.’ The angels left God and pursued Lilith, whom they overtook in the midst of the sea, in the mighty waters wherein the Egyptians were destined to drown. They told her God’s word, but she did not wish to return. The angels said, ‘We shall drown you in the sea.’
「『離れたまへ!』と曰く、『吾が創られし所以は、ただ赤児が病、罹らさんが為。もし赤児が男子なら、吾が手の許に有るは生まれてから8日の間、女子なら20日の間。』」
“ ‘Leave me!’ she said. ‘I was created only to cause sickness to infants. If the infant is male, I have dominion over him for eight days after his birth, and if female, for twenty days.’ ”
「リリスの言葉を聞ける御使たち、帰還を強く求むるも。彼女かく誓えり、『有って有る』神の名にかけて。曰く
『如何なる時も、神、または神の名、あるいは護符に描かれし似姿、吾に見えれば、その赤児に吾が力は何ら及ぼさじ』
して彼女、おのが子を日に百人死なせること諾へり。それゆえ、日に百体の悪魔滅ぶ也。同時に、同じ理由にて、幼い子供たちの護符に我等は御使たちの名を記し置く。その名を認めしリリスは自らの誓ひに従ひ、さればその子は治る也。」
“When the angels heard Lilith’s words, they insisted she go back. But she swore to them by the name of the living and eternal God*6: ‘Whenever I see you or your names or your forms in an amulet, I will have no power over that infant.’ She also agreed to have one hundred of her children die every day.*7 Accordingly, every day one hundred demons perish, and for the same reason, we write the angels’ names on the amulets of young children. When Lilith sees their names, she remembers her oath, and the child recovers.”
途中だが、一旦ここまでとする。
訳注
- *1:
- シュメール(南部バビロニア)神話における豊穣神イナンナ(Inanna)が、アッカド(北部バビロニア)の女神イシュタル(Ishtar)と習合し、同一神と看做されるに至ったもので、どちらの呼び名も正統
- *2:
- オデュッセウスは、キルケーを「美しい女神」「神女」と崇めている。ギリシャ神話は本邦の記紀神話と同様、多種多様な神々が直接に人間と関わるものであり、悪魔も天使も出てこない
- *3:
- 創世記2:18。時系列はやや混乱しており、創世記1章の終わりに
と神の創造を描きながら、創世記2章で26 神はまた言われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、地のすべての這うものとを治めさせよう」。27 神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。
と、別伝を示している。ところが、見識の狭いユダヤ/キリスト教徒は、「別伝」という概念を理解せず「神の創造は二度行われた」と曲解したため、「アダムには前妻があった」などという椿説がまかり通る事となった。離婚を禁じた建前上「再婚した」というのも憚られ、「前妻」は存在を抹消された「魔女」だった、という解釈に至った20 それで人は、すべての家畜と、空の鳥と、野のすべての獣とに名をつけたが、人にはふさわしい助け手が見つからなかった。21 そこで主なる神は人を深く眠らせ、眠った時に、そのあばら骨の一つを取って、その所を肉でふさがれた。22 主なる神は人から取ったあばら骨でひとりの女を造り、人のところへ連れてこられた。
- *4:
- 神名。神聖四文字を呪文として唱えた、ということ。出エジプト記20章
というので、ユダヤ/キリスト教徒には禁じられているのだが、それゆえに力ある言葉と看做され魔術に用いられ、この場合はソロモン王を介し魔術すなわち神通力を行使するものとされる7 あなたは、あなたの神、主の名を、みだりに唱えてはならない。主は、み名をみだりに唱えるものを、罰しないでは置かないであろう
- *5:
- 天使の名は正直、読み方が解らない。日本語版Wikipediaではセノイ(Senoy)、サンセノイ(Sansenoy)、セマンゲロフ(Semangelof)とする
- *6:
- 出エジプト記3章
14 神はモーセに言われた、「わたしは、有って有る者」。また言われた、「イスラエルの人々にこう言いなさい、『「わたしは有る」というかたが、わたしをあなたがたのところへつかわされました』と」。
- *7:
- 似たようなことを古事記でやっているのは興味深い。
最後に、其の妹なる伊邪那美命、おん身自ら追ひ來ります。其の黃泉比良坂へ「千引石」引き塞ぐに、其の石置く中、おのおの對立、事戸度らせ給ふ之時、伊邪那美命の言「我が愛しき那勢命よ、此の如く爲さば、汝が國の人草、一日千頭絞め殺さむ。」次に伊邪那岐命の詔「我が愛しき那邇妹命よ、汝の然し爲さば、吾は一日千五百の產屋立てむ。」是を以て、一日必ず千人死す、一日必ず千五百人生む也。



















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