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【オーディオ】空想回路実験(10)スクリーングリッド(g2)安定化

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friendsofvalves さんのところでは、ミニアンプ計画が恙無く進行中であるから、自分ならどうするか考えてみた。お手軽シングルということなら、6V6 系が良いと思う。GT 管が不恰好に見えるなら、ミニチュア管 6AQ5 にしてもいい。6AQ5 に 300V は掛けられないけど。


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超三結 6V6GT グリッド接地シングル・アンプの空想

五極管なら、G2(スクリーン)がグリッド接地になっているので、G1までグリッド接地にする必要はないが。コンプリメンタリ素子による直列エミッタ・フォロワが持つ電流制限のない駆動力に加え、カソード電圧も無駄にせず出力されるのは魅力。直結にすると不経済過ぎるので、終段と電圧増幅段は RC 結合にする。ここは実装でなるべく距離を近づけたい。初段はカソード・フォロワだから、次段から多少離れても問題になるまい。B 電源から低圧を作るのも不経済なので、C 電源に頼ることにした。その分、電源回路は少し複雑になる、まだ描いてない。五極管で五極管を駆動するということは、高利得になり高帰還になる筈で、抑圧感が強くなる可能性はある。でも 6V6 系は内部抵抗が高く*1緩い音になりやすいから、却って良い塩梅になるかもしれない。

ここで、まだ説明していなかった事があるので、改めて。


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第2(スクリーン)グリッド電位の安定化

五極管・ビーム管では、遮蔽電極スクリーングリッドの電位を保つ必要があり、これが音質にも影響する。その手法を大雑把に纏めると共に、新回路の提案。

B電源そのまま

真空管を駆動する高圧電源を B 電源あるいは +B というが*2、これをそのまま繋ぐ。プレート電圧と同じ電圧になるわけで*3真空管の規格により、これで問題ない球とダメな球があるから、規格表で確認されたい。上條信一氏の超三極管接続 6BM8 シングルが、実はこの形になっている。

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但しこの場合、出力管への入出力はことごとく電源を通ることになるし、電源変動の影響をそのまま受ける。それで220μFという巨大なキャパシタを入れて信号経路のショートカットと安定を図っている。他の設計でもそれでいいのか?となると、何とも言えない。


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分圧抵抗

古典的に抵抗で分圧する。所要の電圧を維持する下側の抵抗 R4 は、その働きからブリーダー breeder とも呼ぶ。「出血抵抗」とは物騒な命名だが、「出血大サービス」なんて宣伝が通った時代には違和感なかったのだろう。このブリーダーには、ある程度の電流を流しておかないと安定しない。目安として

  Ibr > Ig2 × 2

と言われるから、Ig2 が小さな球でないと無理だ。例えば ECL86 五極管部は規格表によると、典型例で Ig2 = 6mA とあるから、常時 12mA 以上ブリーダー抵抗に食わせることになる。


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定電圧放電管

ネオン管やアルゴン管など、一定の放電電圧を保つ電球を利用して電圧調節器に仕立てた真空管のようなもの。50V, 75V, 90V, 150V などがあり、管種にもよるが、概ね 20〜30mA くらいは流せる。


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定電圧ダイオード

もはや製造されていない定電圧放電管に代わるべき定電圧ダイオードが供給されている。但し、大電流を流して使うものではない。*4


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【提案】トランジスタ+定電圧ダイオード

バイポーラ・トランジスタを使えば、ZD の効き目を拡大できる。発想元は電源回路だ。

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トランジスタのベース〜エミッタは PN 接合なので、PN 接合型シリコンダイオードと同じ。つまり順方向電圧 Vf に当たる一定の電圧 0.6〜0.7V を保つ。但し、トランジスタでは Vf ではなく、ベース・エミッタ間電圧 Vbe という。従って、ベース電位を固定してやれば、エミッタ電位は Vbe(0.6〜0.7V) だけ低く、ほぼ一定になる。もちろん限界はあるものの、負荷にとっては ZD の電流がトランジスタの hfe で拡大されて見えるので、スクリーン電流くらいは楽勝。


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しかし、回路の一部に納得行かない方も多い事だろう。なぜ電源を陽極と共有するのか。影響を避けるため、分離すべきではないか。実は筆者もそう思っていたところ、上條信一氏の Ip + Isg 方式を知って考えを変えた。これは共有しなければならない。


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Ip + Ig2 方式

上條さんの提案は、プレート電流 Ip にスクリーン電流 Ig2*5を加算して、出力と歪率の向上に資するものである。

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考え方が異なるので、回路も違い、上條さんは MOS-FET を使っている。

ただ、ここで重要なのは出力電流の合成だ。上條さんの指摘の通り、スクリーン電流 Ig2 をプレート電流 Ip に合成すれば、ほぼ定電流動作になるはずだ。


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具体的に見てみよう。上條さんが考えたのは、ビーム管の出力・歪率向上であるが、古典的ビーム管 6V6 のプレート電流特性は

左下、Ib として表されるプレート電流の肩特性が、低圧でうねっている。ビーム管特有のこの現象をダイナトロンといい、原因は Ic2 として表されるスクリーン電流にプレート電流を喰われるからである。各格子電極グリッドが三極管としても動作してしまうからである。Ib に Ic2 を重ねると、 FET 並みに平坦に、つまり定電流性が良くなる。線形性までは改善されないけれど、出力と歪率が向上する。


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五極管はビーム管より撫で肩、つまり肩特性が悪くなる。ダイナトロンも出ているので踏んだり蹴ったり、Ip + Ig2 方式は五極管にこそ恩恵が大きそうだ。

なお 16A86BM8 のヒーター違いで(史実は 6BM8 の方が16A8 のヒーター違い)、五極管部は(五極管にしては)内部抵抗が低く、比較的に低圧で(180Vくらい)そこそこの出力が出る。しかし Ig2 は通常運転で 7mA、バイアス 0V のときは 100mA を超えるほど大きくなるのが悩みである。この球は蘭 PHILIPS の開発になるもので、原典を尊重するなら PCL82(あるいは PCL82/16A8。6BM8 なら、ECL82/6BM8)と呼ぶべきなのだろう。実際、PHILIPS の資料では、そう書いてある。しかし前世紀中はそんな呼び方をした覚えがないので、まるで別人のようだ。


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上條さんとは発想が違ったので、回路は違うけれど、同じことが実現できるのではないか。

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ベース接地では、低圧の信号をより高圧にレベルシフトできる。カスコード接続でやっていることだ。これは意図していなかったが、結果としてその形になっている。
遮蔽電極スクリーングリッドの出力をエミッタから入力、レベルシフトしてコレクタへ。コレクタに負荷を掛ければ、そこに出力されるから、これをプレート負荷 Rp とすれば、Ig2 がIp に加算される筈だ。
つまり、遮蔽電極スクリーングリッドの電源及び負は荷を陽極と共有すれば、Ip + Ig2 を実現できる。コレで出力と歪率が向上する。ならば、そうすべきだ。上條さんの提案は難しかったのか、追随を見ないけれど、もっと研究されて然るべきだ。


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トランジスタに掛かる電圧は Ep - Eg2 なので、2SC1815 でも行けるのでは?と思って、試したことがある。が、これはダメだった。どうやら電源投入時に、傍熱管が冷間始動している間は導通が無いので、高圧が掛かってしまうようだ。タイマーか整流管を入れれば済みそうだが、タイマーは案外と高価で嵩張り電源を要し雑音源になり、色々と面倒くさい。整流管の方が、まだ安くて場所を取らなかったりするほどだ。そういう訳で今のところ、高耐圧の石を使うしかない。また、目的のためにはトランジスタを使う必要があり、FET では要件を満たさない。


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それにしても、基準電源が ZD なのは変わらない。高電圧 ZD は現状でもやや入手しにくいので、もっと売れるようになって欲しい。


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*1:公称値50kΩ。6L6 は22.5kΩ、16A8(P) も20kΩ、2A3 なら800Ω

*2:A 電源はヒーター。負電源や低圧電源などその他は C 電源

*3:実際は出力トランスの銅損(抵抗性の損失)・鉄損(誘導性の損失)分だけプレート電圧が低くなる

*4:実際は電流ではなく、電力定格がある

*5:上條さんは Isg と呼んでいるが、どうもスクリーングリッドの略称  SG は英語圏で一般的ではないようだ