悪の華
Les Fleurs du mal (1861)
Charles Baudelaire/萩原 學(訳)

憂鬱と理想
SPLEEN ET IDÉAL
82. 同族嫌悪
2版LXXXII、3版LXXXIV
HORREUR SYMPATHIQUE
憂鬱詩群 ソネット形式
脚韻ABAB CDCD EFF EGG
題名は概して『感応する恐怖』などと訳される。後述により改題
この見慣れぬ青ざめた空から、
これ君の運命と同様に大荒れの模様、
君の空虚な魂にどんな思いが
降臨するのか? 答えよ、自由の徒よ。
De ce ciel bizarre et livide,
Tourmenté comme ton destin,
Quels pensers dans ton âme vide
Descendent ? réponds, libertin.
……渇望は飽くことなし
不明瞭かつ不確実なものに対して、
オウイディウスのように泣き言は言わない、
ラテンの楽園から追われようとて
— Insatiablement avide
De l’obscur et de l’incertain,
Je ne geindrai pas comme Ovide*1
Chassé du paradis latin.
打たれたように引き裂かれた空、
我が誇りよ、君が映すは。
嘆きの君の広大なる雲は
Cieux déchirés comme des grèves,
En vous se mire mon orgueil ;
Vos vastes nuages en deuil
わが夢見る霊柩車、
そしてその光に映る
わが心の喜ぶ地獄。
Sont les corbillards de mes rêves,
Et vos lueurs sont le reflet
De l’Enfer*2 où mon cœur se plaît.
訳注
題名からして、ゾンビ映画のような「恐怖の伝染」かと思ったら、どうも勝手が違う。SYMPATHIQUE は sympathie「同情」「共感」を前提した言葉だが、この詩人は果たして、読者に「同情」「共感」を求めたであろうか?むしろ、たちどころに「要らん」と蹴られそうだ。逆に「無用の世話を焼くな」と釘を刺す場面という可能性はないだろうか?というわけで改題。

