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負帰還を掛ける段で躓いてしまったグリッド接地アンプだが、では、どうするか。提案した側としても気になるので、負帰還の概念から復習してみる。
負帰還を掛ける=利得と周波数応答を天秤にかける=「演算増幅器」という設計概念
負帰還を考えるには、演算増幅器として単純化した方が易しい。位相の違いにより反転増幅器と非反転増幅器に分かれ、漢字で書くと「非反転」などというもって回った言い方は不快この上ないが、Non Inverted Amplifier という英語の訳語なのでしょうがない。
反転増幅器
演算増幅器の使い方は、此方が基本になる。「反転」とは位相のことで、入力とは逆相の出力になるから「反転出力」と表現している。

順相(非反転)出力を基準にすると、陽極(+)側を接地し、陰極(-)側に入力する。負帰還 Nfb を掛けるには、出力 Vout から入力抵抗 Rin と(-)の間に戻す。この回路では、ほぼ Rin 次第で入力インピーダンスが決まってしまうので、あまり低くはできず、扱いが面倒でほぼ使われない。
しかし今回のグリッド接地アンプは、全体で見ると、この反転増幅器であるから、この形が基本になる。いや、面倒なのは逃げてぇ。
p - g 帰還

陽極 plate - 格子 grid 帰還というのは、反転増幅器に於て、陽極の反転出力を格子の入力へ戻す負帰還になる。ここで C を挿んでいるのは電位差があるからで、これがないと高圧の陽極からアース電位の格子へ電流が流れてしまう。しかし C を通すと位相が90°進んでしまうので、他に C があったら再反転してしまう危険はあるし、共振点以下では効かない。たいへん面倒な回路になるけれども、用例がない訳でもない。
非反転増幅器

Wikimedia に png ファイルがなくて、SVG ファイルをそのまま持ってきたのだが。見えているだろうか?電圧増幅率は
Vout = Vin * (R1 + R2) / R1
と、2つの抵抗で決まる。一般的な負帰還は、だいたいこの形。反転増幅器と比べて、ぐっと使いやすくなっている。
p - k 帰還
真空管アンプでは、これを出力端、つまり出力トランス2次端子から初段陰極に繋ぐのが一般的。帰還信号を陰極(カソード)に入力するということは、部分的にグリッド接地とすることになり、しかし位相が逆なので入力信号を小さくしてしまう方向に働く。同時に歪雑音を打ち消すので、負帰還は高過ぎても低過ぎてもいけない。
もし間違って位相が順相であれば、音が大きくなる一方で止まらなくなる、つまり発振して、真空管が壊れる。でも出力トランスから返す限り、発振しても逆に繋げば、位相が反転するので問題ない。

具体的には、こう繋ぐ。但し、この絵には帰還抵抗を描いていないし、C が入っていると効かないので、カソード抵抗を分割する必要があるし、実際はもう少し複雑になるけれど、発振しても繋ぎ変えれば問題なし。……本当に、そうか?「そうではない」というのが上條さん以下「超三結」派の主張だ。では、どうすれば?というところだが。既に見た通り、p - g 帰還とするには電位差と入力インピーダンスが問題なのだ。 ……しかし考えてみると、我々は既に、これを解決する方法を知っているのではないか?
超三極管接続
上條さんが提案した超三極管接続とは、p - g 帰還に於いて、帰還抵抗をカソード・フォロワに置き換えた形になる。
というより SRPP の変形に見えるし、実際にそういう回路で試した人もある。

初段 SRPP の電源を終段陽極に繋ぎ替えただけ、にも見える、これで「超三結」が成立する。カソード・フォロワはそのままだから、それだけでも出力インピーダンスを下げ駆動力向上に資するところへ、終段陽極からの帰還が加わるのだ。間違って発振させると手が着けられなくなる……と見て思わず怯えたのだけれど、却って安全かもしれない。帰還ループに LC がないので、位相の回転は心配しなくてよさそうだから。
では、「超三結」回路の帰還ループを今回の回路に使えるかチェックしてみよう。
- 結合コンデンサは入っているか?
- 入っていない。電位差は真空管が引き受ける。
- 入力インピーダンスは入っているか?
- カソード・フォロワの入力インピーダンスは高くなる。
- 位相反転はないか?
- カソード・フォロワは非反転出力。
あれ、もしかして理想の回路?……いやいや、やってみないと解らないぞ。という訳で、回路図を描いて考えた。
PC で便利に使っていた Bsch がスマートフォンでは使えないから、方眼ノートに手描き。入院したときに友人が(息子さん用の買い置きだったらしい)ものを持ってきてくれて以来、気に入って使っている。電源要らないし、書き直しも保存も制限なし。

どうしても C 電源で引っ張る必要はあるし、そうすると入力か段間に結合コンデンサ入れるしかないが、まあ何とかなりそうではないか。電圧増幅段の前に入力バッファ兼帰還球となるカソード・フォロワを挿入した形になるが、6U8 のような5極3極管を使えば、ソケットを増やさずにいけるだろう。
ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
前回だったか、この曲に触れた記憶があるので、此処で紹介する。拍子木の一声に始まり、jazz の語法を好きなだけ使ってみるなど、ラヴェルにとって新世界旅行はなかなか楽しい経験になっていたようだ。演奏はマルタ・アルゲリッチのピアノとエマヌエル・クリヴィヌ指揮フランス国立管弦楽団。
12 April 2019, 21:49
Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan
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